“感覚拡張型エンターテインメント”「STAR ISLAND 2019」が豊洲で開催!小橋賢児が描く非日常の世界で、内に秘めた感覚に出会おう【インタビュー】
2019/07/11
「STAR ISLAND 2019」が7月20日に豊洲ぐるり公園にて行われる。STAR ISLANDは、大都市の摩天楼を一望できる絶景ロケーションを背景に、日本の伝統花火と最先端テクノロジーである「3Dサウンド」「ライティング」「ショーパフォーマンス」をシンクロさせた “感覚拡張型エンターテインメント”。東京での開催が3回目となった今年は、キャパやパフォーマンスの数など規模を拡大して豊洲ぐるり公園で開催される。
3Dサウンドを手がけるのは、長年に渡り3Dサウンドの研究を続け、業界内でも高い評価を受けるKISSonix(キスソニックス株式会社)の伊藤カズユキ。そしてレーザー演出には広告、映像、VJ、空間デザインなど様々なメディアで活動する先鋭的ビジュアルアートデザインチーム「REALROCKDESIGN」のYAMACHANGが起用されている。彼らが創り出す世界観と、国内外から集められたアーティスト達のパフォーマンスが掛け合わさり、一般の花火大会とは全く違う新たな感動を体感できるだろう。
HIGHFLYERSは、STAR ISLANDのクリエイティブディレクター・小橋賢児を取材し、STAR ISLANDを始めたきっかけや、関わるアーティスト達について、また、内から湧き上がる原動力がどこから来るのか、夢についてなどを聞いた。
イベントで非日常の世界を体感して自分の感覚が開いた時に、内にある想いが出てくる。そういった感情に気づくことからしか本当の自分の人生は始まらない
―東京での開催は今年で3回目となりますが、まずはこのイベントをやろうと思ったきっかけを教えてください。
「ULTRA JAPAN」でクリエティブディレクターをしていた時に出会った花火師さんと、お互いがやっていることに新しい可能性を感じて、いつか何かを一緒にやりたいねという話をしていたんです。そんな時、最近は花火大会で協賛を得るのが難しくなってきているため、無料の大会が軒並みに中止になっていることを聞いて。それまで無料だったものを有料化してお客さんに楽しんでいただくには、守るべき花火の伝統は守りつつ、今の時代にフィットした才能やテクノロジーを組み合わせてイノベイティブなことをする必要があると思いました。そこで、職人が魂を込めて造った花火に、僕のこれまでのイベント製作における経験値と、ノウハウを持ったアーティストやパフォーマーといった僕が持つ“出会いのストック”を組み合わせたら、新しいものが生み出せるんじゃないかと思ったんです。
―STAR ISLANDの世界観を表すのに欠かせない、3Dサウンドとライティングを手がけるアーティスト達とはどのようにして出会ったのですか?
3Dサウンドは、初回と2回目は、友達で3Dサウンドデザイナーの友達にお願いしていました。僕は仲間と「感覚を開く会」というのをやって、感覚についてを研究しているんですが、ある時「Underworld(アンダーワールド)」のライブを360度VRで観た時に、実際のライブはすごく感動したのにVRからは伝わってこなくて、なぜかを考えたら音のせいだというのに気づいて。そこで友人のスタジオを訪ね、3Dサウンドのすごさを実感し、彼に依頼しました。
昨年、シンガポールで STAR ISLANDを開催した時から、伊藤カズユキさんにお願いしていますが、伊藤さんとの出会いは「Slush(スラッシュ))でした。彼が開発した3Dサウンドの小さいスピーカーを会場内でデモンストレーションしていて、そのスピーカーがあまりにもすごくて、後日話を聞きに会いに行ったんです。伊藤さんは脳科学の研究者でもあり、二つのスピーカーだけで3Dサウンドに聞こえるような音づくりも研究されていて、僕にとって新たな挑戦としてシンガポールに挑むタイミングで伊藤さんとタッグを組むことになりました。
ライティングに関しては、初回と2回目はULTRA JAPANやクラブイベントなどで活躍している方にお願いしたのですが、シンガポールの時からレーザーを導入したことでYAMACHANGさんに依頼しました。彼はレーザーにまつわる日本でトップと言っていいくらいの凄腕の人で、シンガポールではレーザーをたくさん使える環境だったので彼を選んだんです。今回のSTAR ISLANDも、伊藤さんとYAMACHANGがそれぞれ音とレーザーを手がけます。
―STAR ISLANDの世界観を作っていく上で、彼らとはどういう風に進めていくんですか?
全員ではないのですが参加可能な人たちと合宿してます。今年は宮崎に行きました。まずテーマを決めて、そこから掘り下げていって、僕のビジョンを伝えていく感じですね。
―そのテーマですが、初回は「春・夏・秋・冬」、2回目は「ONE」でしたが、今年は?
今年のテーマは「2019: A SPACE ODYSSEY(トゥーサウザンドナインティーン ア スペース オデッセイ)」です。この世は自分たちがいる世界一つだけしか存在しないと思っていると、「こんなことは無理」とか決めつけてしまいがちだと思うんですけど、STAR ISLANDにつながる日は、自分が作りたい世界を自由に想像して欲しいんです。いろんな惑星に行って、あらゆるリミッターを外して、自分の内から「こんなことを作りたい」とか「あんな風にしたい」とか湧き出る感情を感じて欲しいですね。
―とても楽しそうですね!パフォーマーたちは毎回どうやって選んでいるのですか?
テーマに合わせて選んでいます。開催地の環境によってできないことがあったりするので、それに左右されることもありますが。今回はパフォーマーの中にオリンピック出場者がいます。
―小橋さんは大きな規模のイベントを多数手がけていらっしゃいますが、その原動力となるものはどこから来るのですか?
大きなイベントにこだわっているわけではなく、イベントに来た人たちに普段味わえない感情に出会ってほしいと考えていたら、規模が大きくなっていっただけです。今の時代は情報がたくさんありすぎて、本当の自分を閉じてしまいがちだと思うんですけど、イベントで非日常の世界を体感して自分の感覚がポンと開いた時に、自分の内にある「これをしたい」とか「あそこに行きたい」といった想いが出てくる。すごいシンプルなものなんですけど、そういった感情からしか本当の自分の人生って始まらないと思うんです。日々の中で見つけるのでもいいですけど、非日常な環境だからこそ閉ざしていた感覚や知らなかった新しい感情に出会えると思うので、皆さんにもそこからそれぞれの人生を切り開いてほしいですね。
―イベントに行った時はすごく感動しても、数日経つと日常に染まって、味わった感動が薄れてしまうことが多いのですが。
感動は続かなくていいと思うし、ずっと続くという妄想にかられない方がいいと思ってます。一番大事なのは、その時にふと感じたことを行動に移せるか、だけだと思うんです。そして、その行動がすぐに実を結ばなかったとしても、スティーブ・ジョブズが言った「Connecting The Dots(点と点をつなげ)」じゃないけど、振り返るとその点が自分の新しい人生になっていた、みたいなことでいいと思う。僕も振り返ると27歳で俳優を休業して短期留学でアメリカに行って、友達と車でアメリカを横断し、最終地がたまたまマイアミで。そこでULTRAというフェスに出会い「こんな世界があったんだ!」って感動して、「もっと世界のフェスに行きたい!」ってなって。そこから始まったんですよ。
―自分で行動を起こしていくと、そのように先に繋がっていくんですね。
行った先にはさらにいろんな出会いがあって、そこで新しいものが生まれて、またその次に繋がっていって、気づいたらそれが自分の人生になっていった。だから、まずは小さな気づきが自分の中で生まれることが大事なんですよね。多様な人が一気に集まるフェスやイベントにはそういう可能性があると思うんです。普段は同じような目的を持った人だけが集まることが多い中、フェスやイベントには、例えば昨日失恋した人や、リストラにあった人とか、世界中からいろんな人が来て、そこでエネルギーを交換する。それってすごいことですよね。
ー素晴らしいです!では、イベントを企画、運営して学んだ一番大事なことはなんですか?
一番というのは言いがたいですけど、自分が最初にやりたいと思ったことやワクワクしたことを信じ続けることだと思います。自信って人に見せびらかすものでも、自慢することでもなくて、自分の感覚を信じること。イベントを実現するっていばらの道でしかないくらい、チケットが売れないとか、天気を気にしないといけないとか色々あるけど、結局は一番最初にやりたいと思った衝動とか鳥肌が立つようなワクワクを信じ続けるしかないんです。
―信じ続けるために、小橋さんがしていることは何かありますか?
ひたすら自分を信じて、不安になった時こそ最初に立ち戻って、その時の感覚を思い出す。それしかない。それにチャレンジできたことが自信に繋がっていくんです。
―その感覚って日々の忙しさや周りの意見に左右されたりして、キープし続けるのが難しい時がありますが、そんな時はどうしたら良いでしょうか。
ワクワクを作るためには自分の枠から外れることが大事だと思ってます。枠の中にいると生まれないから、一日一つでもいいので自分の想定外のものを作っていかないといけない。一日一つが難しくても、僕は日常がマンネリ化してきたら、山や自然の中に行ったり、普段とは真逆なことをするように意識してますね。いきなりインドに3ヶ月行っちゃったりとか。
―直感に従って行動されてるんですね。では、小橋さんのように、イベントの企画・運営をやりたいと思っている若者にアドバイスをするとしたら?
そういう子たちに相談されることも多いのですが、みんな情報に左右されて「これをやりたい」って思い込んでいるだけのように見えて、本当にその人にとってやる意味があるのか?と思うことが多いです。僕は30歳前にして全部を失って、目の前にやれることをやるしかなくて、それをやり続けて、振り返れば自分の人生だと言えるものになっていた。自分に起きる不都合なことや、不慮な事故なども、どう捉えるかでそこから新しい人生が切り拓いていく場合もあるし、意図的に枠から外れて出会うことや、目の前にあることを紡いでいった方が、自分にとって本当に必要な人生になる。なので、夢を持つことは大事だけど、夢に縛られて目の前にあることをないがしろにしないで欲しいなと思います。
―ありがとうございます。ところで、最近はどんなライフスタイルを送っているのですか?
今までは自分一人でやっていたことも多かったんですけど、会社の仲間ができたので、これからは彼らとどう作品を作っていくかを課題として頑張っています。あと、週末は家族と出来るだけいるようにしていて、その両立はしっかりやっていきたいなと思ってます。21世紀って心の時代だと思っているんで、家族や仲間とちゃんと向き合えて、かつ仕事もちゃんとこなせるスタイルを確立していかないと、本質的にいい時代にならないんじゃないかと思うので。まあまだ上手くいってないですけど、心がけるようにしてます。
―海外のいろんな国に行かれていると思いますが、今小橋さんが一番好きなところは?
一つを選ぶのは難しいし、目的にもよって違うんですが、一人旅だったらネパールや、メキシコ、南米とかがいいと思います。ネパールはカトマンズからルクラに行って、エベレストの麓でトレッキングしたりしました。メキシコは、「The Mexocan」の舞台にもなったレアル・デ・カトルセという場所に行ったり。他にもいっぱいありますけど、若かったらインドに行ったらいいと思います。
―最後に、今後の夢を教えてください。
夢とか何かを目指すより、目の前に起きることを楽しんで、それからどんな人生が作られていくのかを楽しむ方が好きですね。
―現実的な部分もあるんですね。
現実からしか物事って生まれないんじゃないかと思うんです。今は、情報にかられて本当の自分の道を歩み出せてない人が多いんじゃないかと。「世界を良くしたい」とか、「自分の感覚をひっくり返したい」とか、みんな感覚としては持っているんですけどね。例えば、パナソニックの松下幸之助さんが会社を立ち上げた時、何千億の会社にすると思って始めたのかと言えば違いますよね。目の前にあることをがむしゃらにやっていったらとんでもないものができちゃって、それが世界を変えたっていう。それを現実的と言うのであればそうだけど、夢って聞くと、誰かが作った足跡を追いかけてるだけのような気がして、それは違うと思っていて。僕が30歳の時に「10万人規模のフェスのディレクターになりたい」って思ってやっていたら、実際はなれてなかったと思う。それより、振り返ったら自分が描いた人生を歩んでいた、という方が面白いんじゃないかな。
Interview, Text & Photo: Atsuko Tanaka
【開催日程】2019年7月20日(土)16:00 ~ 21:00 ※雨天決行・荒天中止
【開催場所】TOKYO STAR ISLAND(豊洲ぐるり公園 / 東京都江東区豊洲6丁目5番先)
【主催】STAR ISLAND実行委員会
【後援】外務省、経済産業省、観光庁
【チケット】2019年5月28日(火) 13:00より販売開始(http://r.y–tickets.jp/starisland2019)
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