陶芸家・古賀崇洋が青山で個展「STUDS(スタッズ)」を開催!“世界の常識を突き破る”10人をモチーフに制作した新作を初披露【インタビュー & レポート】

2019/05/11

陶芸家・古賀崇洋の、新作展示「STUDS(スタッズ)」が5月10日から19日まで、青山のCoSTUME NATIONAL LABにて行われる。

福岡県出身の古賀は、現在福岡と鹿児島に工房を構え、世界最大規模の国際家具見本市「ミラノサローネ」やパリの「メゾン・エ・オブジェ」などでも作品を発表し、国内外で精力的に活動を続けている。彼の作品は、代表作である「頬鎧盃」や、スタッズが付いた金・プラチナのカップや仮面、ヘルメットなど、普通に想像する陶芸作品とはかけ離れたオリジナリティに富んだものが多く、常に新しさを求める人たちの感覚を刺激する。

HIGHFLYERSは、今展示のため東京を訪れた古賀をインタビューし、展示のテーマや、活動拠点としている鹿児島や福岡のこと、今後の夢などを聞いた。

都会の価値観やニーズを意識しつつ九州地域の独自性をミックスして、自分というフィルターを通し、今の時代性を作品に具現化していきたい

―今回の展示「STUDS」を開催することになったきっかけを教えてください。

まず、CoSTUME NATIONALさんから展示、コラボのお話をいただいて、いつも僕の展示のプロデュースをして頂いてる株式会社GO さんと方向性やテーマについて話しました。それで、普通に作品を作るだけではなく、僕が普段からすごく勇気をもらっている人を10人選んで、彼らをモチーフに作ったら面白いんじゃないかということになったんです。ひたすら素材と向き合って形作る陶芸、工芸界において人を題材に作品へ昇華し結晶化するというのは斬新な発想だと思いました。

―格闘技世界チャンピオンの青木真也さんはじめ10名選んだとありましたが、他にはどんな方がいるのですか?

本田圭佑さん、ワンオク(ONE OK ROCK)のTakaさん、のんさん、ラッパーのKOHHさん、写真家のヨシダナギさん、べビーメタルさん、フリースタイルフットボーラーの徳田耕太郎さん、スウェーデン人の庭師の村雨辰剛(むらさめたつまさ)さん、台湾を拠点に活動するYouTuberの三原慧悟(けいご)さんです。みなさん僕と同世代で、世界を変えるような“突出した人=スタッズ”たちです。それぞれの方達をイメージして作品を作ってます。例えば青木さんは生き方を絞って、格闘技界でも異端児、ザ突出している方なので、その感じをそのまま表現しました。言葉はもはやいらないですね。本田さんはサッカー選手という枠組みを超え、他の選手がこれまでやらなかったようなことに挑戦し続けていて、日本を代表する強い心臓の持ち主というイメージがあるので、心臓に毛が生えているようにスタッズをつけています。僕は心臓の形がすごく好きなので、それを規則的にインスタレーションとして並べたら面白いなと思いました。

「STUDS」展示作品。本田圭佑(左上)、のん(右上)、ベビーメタル(右下)、青木真也(左下)をモチーフに作られている

―ところで、古賀さんは現在は鹿児島長島町と福岡那珂川(なかがわ)市の2都市に工房を構えて活動していらっしゃいますが、ぞれぞれどんな街なのですか?

鹿児島県長島町は名の通り島なのですが、九州の本島と橋で繋がっており半島扱いになります。海、山に囲まれたとても綺麗なところです。人口1万人くらいで、僕の家の周りには民家もないので、機材による騒音、煙などの苦情に気を遣うことなく夜中でも1日中作業ができます。福岡県那珂川市は福岡市に隣接し、比較的街に近いところにあります。元々は町だったのですが、西日本一大きな新幹線の車両基地ができて、そこが駅になり、博多駅へ1駅(8分)で繋がり、日本一安い300円の新幹線区間になった特殊な駅なんです。それに伴い人口が増えて、昨年市になりました。少子高齢で人口が減っている中、逆に大都市部は人口が増えているところもあるという日本において、郡、町が人口が増えることは稀で、今後劇的な人口変化が見込まれない現状ではもしかすると最後の(合併ではない単独での)市昇格都市になるかもしれないと言われてます。博多駅は福岡空港まで2駅なので合計3駅、20分ほどで空港まで行けます。全国的にも便数の多い福岡空港は東京にも海外にもすぐに行けてアクセスが良いので、僕にとっては世界で戦える秘密基地です。

―古賀さんはご出身は福岡県で、佐賀の大学を卒業されて、鹿児島に移ったんですよね。なぜ鹿児島だったのですか?

大学の同級生に鹿児島出身の友人がいるんですけど、卒業後に僕が作業できる環境を探していたら、彼の実家の会社である大きな敷地の中であればそこで作業していいよと言ってくれたんです。それならばとすぐに引っ越しました。

ーなるほど、そうだったのですね。古賀さんはご自身の活動の軸として、「都市部から発信される時代の価値観やニーズを意識しつつも、九州・鹿児島地域の独自性を積極的に混合し、あえて地方から価値を発信したい」というメッセージを掲げていますね。

昔から受け継がれている風土、風習が人やその営みの独自性に繋がっていくわけで、環境ってすごく大事だなと思うんです。でも今は人やモノもすぐに簡単に行き来できる時代ですし、その気になればどこにだって行けるし、もちろんリモート作業もできる。この時代を利用しない手はないと思って、都会の価値観とかニーズを意識しつつ九州地域の独自性をミックスして、自分というフィルターを通し、この時代性を作品に具現化できたらいいなと思ってます。

―都会と地方で大きく違いを感じることはありますか?

ライフスタイル、働き方を含めた生き方が違う印象ですね。もちろん人によって様々であくまで印象ですが、極端にいうと一次産業と三次産業の印象かなと思います。とくに僕が住んでいる地方は一次産業が都市部に比べて割合が多いので自然現象との時間の擦り合わせがある分勤務時間など極所的です。その分家族との時間、自由な生き方、スタイルを模索している人が多いような印象です。都市部ではオフィスではもちろん、移動時間、帰宅後、寝る前、特にスマホの台頭でいつでもどこでも仕事可能です。本当に極端な話ですが地方では通信機器、PC、スマホは連絡と娯楽。都市部ではそれに加えて仕事が大部分を占めてる気がします。これは実は大きなライフスタイルの違いを生んでると思います。そしてそれは人格形成へも影響大だと両方に触れて実感してます。

―人のキャラクター的にはどうですか?

最初の頃、都市部の方はトークが上手いという印象を受けました。九州の方は多くを語らず男は黙って堂々としている様が美徳。若い人たちは変わってきていると思うけど、上の世代の方々は侍みたいな人がいて、特に鹿児島は西郷隆盛を代表に偉人の方々へのリスペクトがすごい。何か教訓めいたことを話すときに、彼らの名言を引用する方も沢山おられましたね。

―活動を始めて8年目になりますが、アーティストとしてのご自身の成長を感じることはありますか?

はい、やはり作品制作、発表を通じて沢山の人に出会えたことが、一番成長につながっていると思います。作品を作っていれば世界と繋がれる。つたない英語でも作品があれば言語を超えてくれる。作品が未知の世界へ連れて行ってくれる。良い作品なら尊敬してくれる。まだまだですが。その過程で人と出会い、人が新しい気づき、学びを与えてくれて、それがまた僕の制作の肥やしとなる。このスパイラルが自分にとって一番楽しくて幸せなことかもしれないなと。それを実感できてることが成長に繋がっているのかなと思います。

―陶芸界で変えたいと思うことなどはありますか?

そんなおこがましいことはないです。自分のことに必死すぎて、結果論として僕の作品がほんの少しでも誰かの心に刺さったり、気づきになったり、何かの流れに繋がって誰かにとって何かが良い方向に変わってくれたら良いなと思うくらいです。

―最後に、この先叶えたい大きな夢を教えてください。

ある展示で、お客さんに「頬鎧盃を試着していいですか?」と言われたことがあったんですが、陶芸作品を試着していいかと聞かれることってあまりないだろうと思って、これを突き詰めていけば文化になると思いました。様式や作法があって、装着したいと思わせる形が人の動作を誘導するというか、そういうのって文化に繋がるんじゃないかと。そして、その文化がいずれ大きなムーブメントになれば面白いなと思います。あとは、展示を世界中でやって、しっかり結果を残したいです。僕一人だけじゃなく、周りのみんながハッピーになれるような、そういう展示を続けていって、いつかニューヨークのチェルシーやソーホーでその年の主役を張れるようになれたらいいなと思います。

今回の展示では、希望する来場者に、古賀がオリジナルSTUDS作品を100万円で制作するという「STUDS」特別企画がある。会場内に設置された特別な茶室で、古賀と直接「常識を突き破った経験」を会話し、一緒に制作を進めていくそうだ。世界に一つのオリジナル作品を作ってみてはいかが。

Interview, Text & Photo: Atsuko Tanaka

陶芸家 古賀崇洋新作展示『STUDS』
会場:CoSTUME NATIONAL LAB
期間:2019年5月10日(金) ~ 5月19日(日)
住所:〒107-0062 東京都港区南青山5-4-30 CNAC1F
営業時間: 11:00〜19:00
入場無料