本場カリフォルニアの料理をカジュアルに楽しめる、Crowley’s California Kitchenが奥渋にオープン!音楽業界での成功の後、東京でオーナーシェフになったジェフリー・ビショフ【インタビュー】

2018/12/19

オーガニックを中心とした旬の食材が豊富で、ミシュランの名店などが名を連ねる米国北カリフォルニア。特にサンフランシスコやバークレーなどのベイエリアは、 数多くのカリフォルニア料理の名店が数多く存在する。そんな美食の街で長年カフェ&レストランを営んできたサンフランシスコ出身のシェフ、ジェフリー・ビショフ(Jeffery Bischoff)が、このたび東京へ拠点を移し、オーナーシェフとして奥渋エリアにカリフォルニア・スタイルのアメリカ料理レストラン、「Crowley’s California Kitchen(クローリーズ・カリフォルニアキッチン)」を12月10日にオープンした。

ジェフリーは、1989年にCinder Block(シンダーブロック)株式会社を創立。以来2009年まで、CEOとして20年以上エンタテインメントや音楽及びコンサートビジネスを中心に、アーティストやブランド、また各種ツアーの物販デザイン、ライセンシング業務などを行ってきた。グリーンデイ、レディオヘッド、スマッシング・パンプキンズ、フィル・コリンズ、ボブ・ディラン、スティービー・ワンダー、エミネム、REM、ゴリラズ、サーティー・セカンズ・トウ・マーズ等、あらゆる音楽ジャンルのアーティストたちの物販を担当する一方で、実父と2人の兄がプロの料理人だったこともあり幼少時から食に親しんだ。2002年にはグリーンデイのベーシスト、マイク・ダーントを始め、他2名の共同経営と共にRudy’s Can’t Fail Cafe(ルーディーズ・キャント・フェイル・カフェ)をサンフランシスコの隣町オークランドにオープン。 現在も、同メンバーで店を経営している。

ジェフリー・ビショフ

もともとマスターシェフと呼ばれるスイス出身のデニス・マルティーグ氏の元で修行し、フランス料理からパティシエ技術まで学びシェフになることを目指していたが、その後、自身の会社設立と同時にバンド「Tilt(ティルト)」のギタリストとして数年に及ぶワールドツアーを行うなど、ミュージシャンとして活躍。4枚のアルバムを発表して、まずはミュージシャンとして成功を収めた。その後、会社経営を経て、日本に生活ベースを移したことを機に、念願だったオーナーシェフへの道が拓かれたのだ。

ジェフリーの日本での初の試みとなる「Crowley’s California Kitchen」は、カジュアルな雰囲気で本場さながらのシンプルかつモダンなカリフォルニア・キュイジーヌをリーズナブルな価格で楽しめる新しい話題の店として、グルメ達の間ですでに注目を集めている。

HIGHFLYERSは、オープン前のプレス発表会で、ジェフリーへインタビューを行い、東京に拠点を移して店をオープンすることになった経緯や、メニューへのこだわり、日本の印象、今後の展望などを伺った。

オークランドではどのようなレストランを営んでいるのですか?

エメリービルというエリア、ピクサースタジオの向かいで、クラシックでカジュアルなダイナーをやってるよ。ここで出している料理とは違って、アメリカンダイナーのメニュー中心のレストランだね。

グリーンデイのベーシスト、マイク・ダーントさんと共同経営されているそうですが、彼との出逢いを教えてください。

グリーンデイのメンバーとは17、18歳の頃からの友人で、僕が当時やっていたバンドはいつも彼らと一緒にプレイしていたんだ。その後は僕の会社で彼らのツアーTシャツを作っていたしね。1990年〜2009年の間に作られたTシャツは全部僕の会社がデザインしたものだよ。エミリービルでカフェ物件を見つけた時に、マイクに連絡して、「ダイナーをオープンするんだけど、一緒にやらない?」って聞いたら、「いいね、やろう!」ってすぐ決まったんだ。

ジェフリーさんは、これまで音楽業界でもお仕事をされていたんですよね?

僕は今までいろんなことをやってきた。若い頃はシェフとしてキッチンに長い間立ち、それからミュージシャンとしてバンドでギターをやり、コンサートグッズなどのデザインや商品を製作する会社を設立した。2009年に会社を売った後はテクノロジーのベンチャー企業をコンサルティングしたり、アドバイザーをしたりしていたよ。でもその間も料理はずっとして技術を磨いてきたんだ。ようやく自分の情熱を注いできたことを思い切りやるのに最高なタイミングが来た感じだね。

料理が一番お好きなんですね。

うん、もちろん音楽も好きだけど、だからってギターは毎日弾かない。でも美味しいものは毎日料理して食べるよね(笑)。

小さい頃から料理をするのは好きだったんですか?

うん。僕の父と二人の兄はシェフで、小さい頃は父がパンを作ってくれるので、家の中にパンの香りが漂っていたのをよく覚えてる。父はドイツ人なんだけど、ジャガイモのパンケーキもよく作ってくれた。ジャガイモをグラインダーにかける時、僕はキッチンテーブルの下にいて、上から落ちてくるジャガイモをつかまえたりしていたよ。15歳の時、レストランで働き始めてからは料理に対していろんなアイディアが閃くようになった。僕が思うに、食べ物って最高のアートだと思うんだ。農家の人々や土、天気とか、たくさんの要素が絡み合ってコラボレーションが生まれるからね。見た目も香りも、10代の頃から料理がもたらすアートや科学を信じているし、人のために料理するのが本当に大好きで、今でもよくパーティーを開いてるよ。

なぜ、このタイミングで日本でレストランをオープンしようと思ったのですか?

ずっとやりたいと思っていて、2、3年前から本気で計画していたんだ。他の仕事との兼ね合いでなかなか踏み込めなかったけど、日本の学校に娘を通わせるために日本に引っ越すタイミングでお店もやることを決心した。最初は自分のアイデアやコンセプトを試しながら、今年8月にこの場所でカフェを期間限定で開いてみたらすごく好評だった。それがきっかけでオープンすることになったんだ。

 メニューはどんなものからインスピレーションを受けるのですか?

カリフォルニアスタイル、つまりフレッシュなアメリカ料理がベースだけど、ここでは日本の四季を感じられるものやお気に入りの調味料も使っている。例えば、10年前に初めて知って驚かされた沖縄の黒糖や、LAに住んでる日本人の女友達が教えてくれて以来大好きな塩麹と甘酒とかね。メニューはシンプルで偽りのないものに仕上げたかった。でも、完全にヘルシーかと言ったらそういうわけでもなくて、リッチなチョコレートケーキもあれば、フライドチキンもポークサンドウィッチもある。それに野菜もお肉も、オーガニックの小麦やワインも、値段ではなくクオリティ重視で選んでいるよ。

上段左:エビと舞茸のフリット、キヌアとレンティルのサラダ 上段右:オーガニックワイン 下段左:フライドチキンバーガー 下段右:チョコレートケーキ

—カリフォルニアや日本でよく行くレストランはありますか?

長い間インスパイアされてきたのは、「Chez Panisse(シェ・パニース)」。シェ・パニース出身でスターシェフとなったジェレミア・タワーの “Let ingredient speak itself(素材そのものの力を信じよう)”という言葉からは特に大きな影響を受けているよ。あとは、もうすぐ閉店してしまうけどオークランドにあるレストラン「CAMINO(カミーノ)」が大好きだった。それから長年シェ・パニースで働いていたシルヴァンという僕の友人がやっているサンフランシスコの 「Izakaya Rintaro (居酒屋リンタロ)」も美味しいね。

最近のカリフォルニアの食のトレンドについて教えてください。

ラーメンの一言に尽きる(笑)。とにかく流行っていて、本当にたくさんのラーメン店ができてるよ。新鮮な野菜を使ってるし、麺もまあまあいいと思う。でも日本のラーメンに比べると、だしがまだ弱いかな。あと気づいたのは、ここ3、4年で、料理全体がシンプルな方向に戻っていると思う。10年くらい前はみんな有名シェフのトーマス・ケラーとかスペインの「El Bulli(エル・ブジ)」、ロンドンの「The Fat Duck(ザ・ファット・ダック)」みたいに分子ガストロノミーのような革新的な形にこだわって、ジェルを作ったり、爆発させたりしていた。もちろん驚きはあるし、美しい料理だけど、毎日は食べられないよね。それに技術も必要だから挑戦する人はたくさんいても優れた人はあまりいなかった。でも、カリフォルニアにはたくさんのいい農家があって、愛情を注いで野菜や動物を育てているし素材そのものが素晴らしいから、シェフはシンプルにいろいろ手を加える必要はないんだ。これからもっとシンプルになっていくといいなと思うよ。

このお店をどのようなレストランにしたいと思ってますか?

地元のお客さんにとって、ランチもディナーも、いつでも来やすい雰囲気のレストランにしたいと思ってる。居心地が良くてカジュアルで、職種に偏ることなくいろんなタイプの人に来てもらえると嬉しい。家族や女性、おばあちゃんが一人ランチに来るのでもいいし。

最後に、あなたにとって成功とはなんですか?

僕はもう成功していると思う。好奇心旺盛で美しくて、聡明で歌が上手い娘がいるからね。彼女が美しい人に育ってくれるだけで本当に幸せだよ。娘は、他人に優しくできる子だけど、間違ったことに対してはNOと言える強さを持っているから大丈夫。僕はただいいお父さんになるだけ。それが成功だね。

Interview & Text: Kaya Takatsuna / Photo: Atsuko Tanaka

 

Crowley’s California Kitchen

住所:〒150-0047 東京都渋谷区神山町40-5

電話:03-6804-7530

HP:https://www.crowleyskitchen.com/