「ショーメ 時空を超える宝飾芸術の世界ー1780年パリに始まるエスプリ」が開催! 創業から240年、老舗メゾンの歴史を振り返る【イベントレポート】

2018/06/27

6月28日(木)から三菱一号館美術館にて、フランスのハイジュエリー・時計ブランド、ショーメの回顧展「ショーメ 時空を超える宝飾芸術の世界ー1780年パリに始まるエスプリ」がスタートする。日本で開催初となるこの特別な展覧会では、18世紀後半から約240年もの間に作られたジュエリー、工芸品、絵画やデザイン画など、未公開を含む約300点もの作品が展示される。

ルーヴル美術館名誉館長のアンリ・ロワレットと三菱一号館美術館艦長の高橋明也の共同監修の元、ルイ・ヴィトンやクリスチャン・ディオールなど名だたるメゾンのショーなど、壮大で美しい世界を演出するビュロー・べタク(BUREAU BETAK)が展示演出を手がけた。

ショーメの歴史は、ひとりの宝飾職人マリ=エティエンヌ・ニトに遡る。1780年に創業、皇帝ナポレオン1世や皇妃ジョゼフィーヌをはじめとする皇族、多くの貴族を顧客に持ち、豪華で美しい宝飾品を制作してきた。彼の没後は、息子のフランソワ=ルニョー・ニトがメゾンを後継し、その後ジャン=バティスト・フォサン、彼の息子ジュール・フォサンを経て、ジョゼフ・ショーメによって引き継がれ、1889年にショーメの名がメゾンに冠された。ショーメらと共に有能な職人の手によって制作された数々の芸術最高傑作品は、長い歴史を超え、今も尚、人々の心を魅了し続けている。

「戴冠衣装の皇帝ナポレオン1世」フランソワ・ジェラール 1806年 アジャクシオ、パレ・フェッシュ美術館/この絵に描かれている王座、月桂冠、レジオン・ドヌール勲章頸飾、王笏、正義の手の杖、剣の宝石のセッティングをしたのがマリ=エティエンヌ・ニト  (c)ショーメ

今回の回顧展はメゾンの歴史の流れを単に辿るものではなく、常に革新的であるショーメの創造性を様々な切り口から見せるとして、創業初期の頃から現代までの作品が「歴史の中のショーメ」「戴冠!ティアラの芸術」「自然を披露するーこの光り輝く金と宝石の世界(ボードレール)」など、八つのチャプターに分けられ展示されている。見たこともないような大きさの宝石がいくつもあり、圧倒された。

いくつかの展示作品を紹介しよう。例えば最初のチャプター「歴史の中のショーメ」に展示されている、皇帝ナポレオン1世が1804年の戴冠式にて教皇ピウス7世に贈呈したティアラ。ティアラの上には414カラットものエメラルドがある。展示スペースの奥に威厳を持って佇むティアラの存在感と美しさには思わず息を呑んでしまう。

皇帝ナポレオン1世より贈呈された教皇ピウス7世のティアラ。アンリ・オーギュスト(金銀細工商人)、ニト・エ・フィス(マリ=エティエンヌ・ニト、フランソワ=ルニョー・ニト)1804ー1805年(後世に数回修正)(c)ショーメ

第3チャプターの「戴冠!ティアラの芸術」では、女性なら誰しもがハートを掴まれてしまうであろう数々の美しいティアラがガラスケースの向こうで光り輝いている。中でも目を引くのが、皇妃ジョゼフィーヌの後継に当たるロイヒテンベルク家に由来するもの(下写真の右上)。32個のエメラルドと698個のダイヤモンドを使って作られていて、中央の花のエメラルドは重さ13カラット。花のモティーフは身につける人の動きに応じて揺れ動く。また、それぞれの花は取り外しが可能で、ブローチや髪飾りとして着用できるそうだ。

左上から時計回りに、「カーネーションのティアラ」ジョゼフ・ショーメ 1905年、「『ロイヒテンベルク』として知られるティアラ」ジャン=バティスト・フォサン 1830-1840年頃、「『ナチュラル ドゥ ショーメ』コレクション ティアラ『鮮紅色の情熱』」2016年、「カロリーヌ・ミュラ(ナポレオンの妹)のインタリオ・ティアラ」ニト・エ・フィスに帰属 1810年頃 (c)ショーメ

ガラスのケースに浮かび上がるように展示されたティアラ photo by Atsuko Tanaka

そして最終章の第8チャプター「遥けき国へーショーメと日本」では、パリのジュエラーと日本の文化の結びつきを見せてくれる。鎌倉時代の弘安本系北野天神縁起絵から引用されたとする雷神と着物を着た女性のブローチ(下写真左)やジャポニズム風のデッサン画(下写真右)から当時のデザイナー達が日本の芸術に影響を受けていたことがわかる。また、今回の展示のために特別に制作されたパリュール(下写真中)は桜の花びらが舞い散る映像と共に、ショーメの世界感を愉しむことができる。

写真左から、「ジャポニズムのブローチ『雷神』ジョゼフ・ショーメ 1900年頃、「『シャン ドゥ プランタン』パリュール ネックレス」ショーメ 2018年、「ジャポニズム風のデザイン画」ショーメ 1925年頃 (c)ショーメ

桜の花びらが舞い散る映像の中に飾られた「シャン ドゥ プランタン パリュール」Photo by Atsuko Tanaka

是非会場に足を運んで、長い時を刻んできた貴重な作品が放つオーラを体感してはいかがだろうか。展示は9月17日まで。

Text & Photo: Atsuko Tanaka

 

ショーメ 時空を超える宝飾芸術の世界ー1780年パリに始まるエスプリ

会期:2018年6月28日(木)〜9月17日(月・祝)

開館時間:10:00~18:00(金曜、第2水曜、9月10日〜9月13日は21:00まで)

休館日:毎週月曜(但し、7月16日、9月10日、9月17日とトークフリーデーの7月30日、8月27日は開館)

場所:三菱一号館美術館

住所:東京都千代田区丸の内2-6-2

詳細はオフィシャルHPにて