まるでダンスホール!観衆を支配し、一気に興奮の絶頂へと導く圧巻の激アツライブ!Vintage Troubleが二度目のGREENROOM FESTIVALへ【ライブレポート&インタビュー】

2018/06/13

14回目を迎え、2日間に渡って盛大に開催されたGREENROOM FESTIVAL。一日目、BLUE SKYステージのトリを飾ったヘッドライナーは、2013年以来、2回目の出演となったVintage Trouble(ヴィンテージ・トラブル)。すでに個々で音楽活動を行っていたタイ・テイラー(Ty Taylor、vocal) 、ナル・コルト(Nalle Colt、guitar)、リック・バリオ・ディル(Rick Barrio Dill、bass)、 リチャード・ダニエルソン(Richard Danielson、drums)の四人が集って、2010年にハリウッドで結成されたロックバンドだ。彼らのサウンドは、R&B やソウル、ファンクのテイストがありながらも、ローリング・ストーンズやチャック・ベリー、ザ・アニマルズといった50年代や60年代のブルースやロックを彷彿させる。2014年にはロックバンドとして初めてブルーノートからメジャーデビューを果たしたという稀有な経歴を持つことでも知られている。

ブライアン・メイ(クイーンのギタリスト)、ボン・ジョヴィ、レニー・クラヴィッツのツアーに帯同し、ローリング・ストーンズのロンドン公演やAC/DCのヨーロッパツアーのオープンニングアクトを務めて一躍脚光を浴びた。また、ボナルー、SXSW、ロック・イン・リオなど世界中のフェスにも出演。そして自身のライブは18か国で600公演、200万人を動員しているという大人気のバンドで、会場の規模に関わらず、観衆を一気に興奮の絶頂へ持って行く支配力と熱いパフォーマンスが絶賛されている。

GREENROOM FESTIVALでのライブも絶好調だった。「Are you ready? Get your hands together. Vintage Trouble!(みんな用意はいいか?Vintage Troubleの登場だ!拍手を!)」のアナウンスと共にメンバーが登場。そして、「さくらさくら」のイントロをプレイし、ゆっくりとヴォーカルのタイがステージ上に現れた。その後、一気に演奏はアップテンポに。1曲目「STRIKE YOUR LIGHT」からすでに会場は大盛り上がり。「TOTAL STRANGER」が終わると、「なんて素敵なフェスティバルなんだろう!もしもこのフェスがスシだったら間違いなく『美味しいですね〜』って言って食べてるよ」「今日は横浜にダンスしに来たんだよね?一緒に踊ろう!みんなが踊るのが見たいな」と言って、「DOIN’」が始まると、会場は徐々にダンスホールの様な雰囲気に。その後は、「CAN’T STOP ROLLIN’」「BLUES HAND ME DOWN」「ANOTHER MAN’S WORDS」「KNOCK ME OUT」とパワー全開で駆け抜け、最後は会場へお決まりのダイブ。最高に熱いステージを魅せてくれた。

HIGHFLYERSは、開演2時間ほど前にメンバーにインタビューを行い、GREENROOM FESTIVALについてや、日本とアメリカのフェスの違い、ライフスタイルについてなどを伺った。

Vintage Trouble。左からナル・コルト、 リチャード・ダニエルソン、タイ・テイラー、リック・バリオ・ディル

—昨日日本に着いたそうですが、時差ぼけは?疲れていませんか?

ナル(g):全然平気。ロックンロールは眠らないから(笑)。

—今回が2回目のGREENROOM FESTIVALですね。前回2013年に出演した時のことを覚えてますか?

リチャード(ds):もちろんだよ。僕たちのライブで、スタンディングエリアにいる観客みんなが一斉にしゃがんで一気にジャンプしたりダンスしたりして楽しむことをソウルピット(Soul-Pit)って呼んでいるんだけど、世界のどのライブ会場のソウルピットがナンバーワンかを競っていて、前回のGREENROOMフェスで今までで一番大きいソウルピットができたんだ。最高にクールだったね。

—最大のソウルピットがGREENROOM FESTIVALだったとは、思い出深いですね!

タイ(v):当時は結成して間もない頃だったし、あまり日本で知られていなかったから、この規模でライブをするのはまだ時期尚早だと思っていたんだ。日本にどういうインパクトがあるかもまだよくわかっていなかったからね。そんな時にライブをした場所だから、ここは僕たちにとって凄くスペシャルなんだ。日本の友人もいるし、すぐ近くにはフードブースもあって、凄くいい匂いがしてくるのもいいよね(笑)。

—アメリカと日本のフェスって全然違いますか?

タイ:アメリカのフェスって、もっと広大なエリアでやってるイメージがあるけど、このフェスはいい意味でユルくてタイトだと思う。あとは子供がたくさんいるよね。アメリカでもたまにそういうフェスがあるけど、このサイズ感のフェスでこれだけ多くの子供がいるのは珍しい。あとは、海のそばなのもいいね。

ナル:ここはなんだか日本のサンフランシスコみたいだよ。

—日本の魅力ってどんなところですか?

タイ:僕は日本のファッションにかなりハマってる。今日は渋谷で、キャメルブラウン色のパンツをここに来る前にもう買っちゃったし(笑)。日本のカルチャーは、伝統とモダンがうまく融合してバランスを保っているのが素晴らしいと思う。音楽も古いサウンドと新しいサウンドが混ざり合っているところが、僕たちの音楽にも凄く通じるんだと思う。あとは、デザインとか色のコンビネーションが、日本の懐かしい心象風景のように記憶に残っているんだ。ブルーやシャトルーズグリーン、パンプキンオレンジとかのカラーコンビネーションを見るとまるで故郷のように感じるよ。

—現在、LA(ロサンゼルス)が活動拠点ですが、音楽をやる上でLAという土地からインスパイアされるものはありますか?

ナル(g):間違いなく、LAは音楽のメルティングポット。ヘビーロックから何から、すべての音楽がここにある。僕がスウェーデンから来たように、 LAには、カルチャーの土台が異なる場所から全く違ったエネルギーを持つ人たちがやって来て、一緒になって音楽をする場所。日々どんな人やものに出会うかが音楽に直接影響するよね。だからミュージシャンにとってLAはパーフェクトな場所だよ。

タイ:最近は、ロスフェリスとシルバーレイクというエリアに凄くインスパイアされるよ。ちょっと東海岸のような雰囲気もあるし、カリフォルニアらしさもあってリラックスしたエネルギーが流れている。コーヒーショップがあちこちにあってしょっちゅう行っているよ。大好きなお店ばかりなんだ。あとは、サンフランシスコのようにクラブが多い場所や、最先端のエリアからも刺激を受けるね。

リック(b):ハリウッドが大好き。一週間前に親友が北カリフォルニアから遊びに来たんだけど、朝一緒に近所のコーヒーショップに行って人間ウォッチングをしたんだ。そしたらクレイジーなブロンド髪の女性がロールスロイスに乗って来たと思ったら、次に裸のホームレスの男が入ってきた。ハリウッドはなんでも集まってきて、いろんな人たちがいろんなことをやろうとしている混ざり合ったエネルギーが面白い。とにかく最高だよ。

リチャード:住まいのあるローレルキャニオンは、昔から音楽に造詣の深いエリアで知られているけど、今も素晴らしいアーティストやミュージシャンがたくさん住んでいるんだ。いきなり夜友人から連絡が来て、「今からジャムセッションしようぜ」って言われて、家から5分くらい歩いて友人の家に行って、朝5時までジャムセッションすることもあるよ。 ミュージシャンがたくさんいる街に住んでいること自体がもの凄く刺激的だよ。

—では最後にお聞きします。私たちのウェブマガジンHIGHFLYERSのテーマは“成功”なのですが、みなさんにとっての“成功”とはなんですか?

ナル:自分が愛することをやり続けられること。いつでもどこにいても、クリエイティブな気持ちでいられることが成功。

リチャード:成功とは、”state of mind”(心の状態)だよね。今は、毎日目が覚めると、夢なんじゃないかって自分をつねってみるほど、ずっと叶えたかった夢の中で実際に生きているんだ。成功とは心の問題であって、栄光や名誉、お金は全く関係ないことだよ。

タイ:でも今稼いでいるよりも、もうちょっと稼げたらいいよね(一同大爆笑)。それは半分冗談として、本当に言おうとしていた成功っていうのは、一日の終わりにもう少し平和な気持ちでいられる状態になることかな。今は、「こうなりたい!」っていう目標や欲望に向かって突き進んでいるので、いつかもう少しピースフルな状態になりたい。別に丘の上の豪邸に住むようなことを成功とは思っていないけど、生活費だとかくだらないことを一切心配しないで、好きなことをやり続けられるようになることも成功。大変なことだけど。

リック:みんなが言ったことももちろんそうだけど、僕にとっての成功は、生活の中で自分が生きがいを感じながら、至福の気持ちで暮らしていけることだと思う。ちょっとスピリッチュアルなことだけど、“自分が大好きなこと”、“自分が得意なこと”、そして“生活のためにすべきこと”の3つの輪が重なった部分が幸せだという考え方があるんだ。僕はこの考えがとても好きで、これを実現していれば、周りの人のことを思いやれるし、自分自身のことも、自分のやっていることも愛せるようになると思っているよ。

インタビューでは、ステージに通じるエネルギッシュでポジティブなオーラを感じた一方、常にピースフルな精神状態を意識して暮らしているなど、意外な一面を垣間見ることができた。四人とも、質問に対してすぐにクリアな答えや意見がスピーディに返ってくる潔さがとても印象的だった。やりたいことを手に入れて、夢を現実のものにした、遅咲きのロックスター達の次回の来日に期待したい。

Interview & Text: Kaya Takatsuna / Photo: Atsuko Tanaka