3夜限りの幻の野外レストランが開店!世界的シェフ・渥美創太の料理と美しい陶磁器が伝えた壮大なテーマとは 【レポート】
2016/10/21
■参加費15万円も納得。最高級な料理とワインに美しい皿、そして未体験なロケーション
2016年10月8日(土)~10日(月・祝)に佐賀県唐津にて開催されたグルメイベント「DINING OUT ARITA& with LEXUS」の第9弾に参加してきました。参加費約15万円!泣ける程、素晴らしいイベントのレポートです。
何よりも目玉なのは、やはり料理でしょう。「New York Times」でも紹介され、今、パリで最も人気なレストラン「CLOWN BAR」の若きシェフである渥美創太さんが、開催場所の唐津の食材を存分に活かした最高級なコース12品を提供してくれました。本イベントは料理に加え、ロケーション、陶磁器、高級ワイン、エレガントな演出など、どれもが特別なおもてなしとなっていました。その美味しくて、驚きと感動の体験を紹介していきます。
■地方創生をテーマにしたイベント
まず、読者の皆さんは、佐賀県唐津と言ったら、何を思い浮かべますでしょうか?本イベントは地方創生をテーマに掲げておりまして、食を通じて地方に残された美しい自然や伝統文化、歴史、地産物などを再編集し、新たな価値として顕在化させています。参加者は、夜空の下、五感すべてで、その土地の豊かさを味わいます。
ツアープラン「DINING OUT ARITA& with LEXUS/ディナーと1泊朝食付」は現地までの交通費は含まず、お値段は約15万円。国内旅行としては随分と高価なものとなります。しかしながら、二度と味わえないその体験に、参加者の満足度はかなり高いものになっていた様です。
■会場は秀吉の朝鮮出兵の拠点、佐賀県唐津の名護屋城跡
会場は、国の指定特別史跡「名護屋城跡並びに陣跡」。豊臣秀吉による朝鮮出兵(文禄・慶長の役)の出兵基地として築かれた城で、その広さは17万平方メートルに及びます。かつては五層七階の天守閣が建っていた天守台は、玄界灘や冬場は対馬まで見渡せる絶好のロケーション。ディナーを味わう場所は巨大な石垣から雄大な大木が生え力強さを増した乗馬訓練の場であった「馬場」にて実施しました。
■有田焼創業400年の歴史とパリから来日したシェフの料理のコラボレーション
今年は有田焼創業からちょうど400年だそうです。日本の伝統工芸に新たな価値を加えて世の中に発信し続けるクリエイティブプロデューサーの丸若裕俊さんが、その歴史と源流を辿りながら、有田・唐津・伊万里という生産地を超えて、13人の窯元・作家と共にオリジナルの器をプロデュース。パリで最先端の料理を提供する渥美シェフの料理との見事なマリア―ジュを披露してくれました。
いくつか丸若さんに質問をしてみました。
-今回は料理と器のコラボレーションだった訳ですが、料理と器のどっちを先に決めていくんですか?
丸若:ケースバイケースですが、基点というか主役は、やはり渥美シェフの料理です。彼が食材とこの土地から感じた料理のイメージを元に器の方向性を具現化していきます。職人が作ったファーストサンプルを渥美シェフに見せると、そこからまたインスピレーションが湧いて、料理にまた変化が現れたり、それをうまくまとめて行くのが僕の仕事です。
-400年の歴史に新たな価値を加える時、変えたらいけないものとは何ですか?
丸若:「らしさ」だと思います。唐津で言えば、「エネルギー」がらしさです。基点となる場所なので、自然とは何かを問い、素材を活かしたものになっているかです。伊万里は「気品」です。元々、献上していたものですので。有田は「多様性」というか「全て」です。磁器の総称と言うか、世界においても有田は強い存在ですし、400年の歴史を背負っていくすごみがあります。
■渥美シェフの佐賀の食材に対する感想
「イソギンチャク」や「佐賀牛」など佐賀の食材をメインに使い、これまでの概念を覆した料理を披露した渥美シェフ。佐賀の農家30軒ぐらいをまわり、厳選した食材で料理をしてくれたのですが、世界各国の食材を見てきた渥美シェフに唐津の野菜の感想を聞いたところ、即答で「世界2位」との回答がありました。水が引けないので雨だけで育てている有機農家の野菜は特に素晴らしかったとのこと。土が強いと表現されていました。ちなみに気になる1位はフランスブルターニュ地方とのこと。この日の皿「クエセビーチェ」に関しては食材の半分がブルターニュのもので、半分が佐賀のものだったと教えてくれました。
■ソムリエ大越基裕氏による料理のドリンクペアリングに驚き!「りんごと出汁のノンアルコール」など
ほぼすべての料理にピンポイントでドリンクペアリングをしたソムリエ大越基裕さん。肉や魚といった食材で判断するのではなく、料理自体に対して、ドリンクを同調させたり、補完させたり、中和させたりといったことをロジカルに考えながら、少し自由を持たせてワインをセレクトしていると教えてくれました。今回は、ノンアルコールにも多く挑戦し、りんごと出汁のドリンクや紅茶でしいたけを煮出したドリンクなど、思いも寄らないドリンクをそれぞれの料理にペアリングしてくれました。これがとても美味しかったです。出来るだけ加糖はしたくないので、野菜などの自然の甘味などを利用し補う様にしているらしいです。
-今回、渥美創太シェフの料理にペアリングしてみていかがでしたでしょうか?
大越:旧知の間柄であるけれども、最初から最後まで創太シェフの料理にペアリング出来たのは初めてで、本当に嬉しかったです。僕より全然若いけれども、これだけ若いシェフの中で、味覚の感覚がよく合うと感じたことは他にはなく、年齢は関係ないと初めて気付かせてくれたシェフなんです。
-全体を通じて、感じたことはありますか?
大越:ノンアルコールの世界はもっと面白くなるかなと思いました。私はまだノンアルコールについては、経験が多くはないのですが、最初から最後まで通して、お客さんが、ずっと呑めるものを提供出来ると手応えを感じました。日本人は外国人に比べてお酒を呑まない人が多いので、そういった意味でもペアリングを楽しむことを味わってもらえればと思っています。家庭では出来ないレストランならではの楽しみですから。
■スマートで優雅なイベントに仕上げたホスト役の中村孝則氏
ホスト役の中村孝則さんは、「世界ベストレストラン50」の日本評議委員長であり、食やファッション、カルチャーなどをテーマにするコラムニストとして活躍されています。無駄の無い的確な進行の中に文化に対する愛情が感じられ、会場はスマートで優雅な空気に包み込まれました。
-今回のDINING OUTはいかがでしたでしょうか?
中村:DINING OUTは、たったの3日間のために作られ消えてしまう。この名護屋城もたったの5か月で建て、そこから足かけ7年の大きな戦争をして、秀吉が死んだ後、この城もなくなった。どこか儚い感じが期せずしてリンクしたと思いますね。そして、料理はもちろん、このイベントを一緒に作り上げていくスタッフとの一体感が、お客さんに伝わっていたと思います。その中心にいたのが丸若さんだと思います。
-今回は100人以上のスタッフでイベントを作り上げた訳ですが、スタッフに共通されることは何だったのでしょうか?
中村:400年前の人間力に挑戦したいという気持ちだと思います。丸若さんは400年前の技法に拘り、窯元の人と古唐津と戦っていて、それは400年前の職人との戦いでした。要するに、400年前の物作りにコミットすることで、そのエネルギーを次の400年に繋げることが出来ると思ったのです。そこには、今のテクノロジーが戦っても勝てないものがあるんです。まさに人間力への挑戦なのです。
■最後に、渥美創太氏、大越基裕氏、中村孝則氏、丸若裕俊氏に、このイベントがどの様に地方創生に寄与するかを聞いた
-本イベントが地方創生に対して、どの様に寄与していくと考えていますか?
渥美(シェフ):料理人が出来ることは、農家や漁業をやられている方々とハッピーな関係を作れるところだと思うので、出来るだけそれを続けていきたいです。僕自身、日本ではそれ程でもないですが、パリやアメリカでは注目してもらっているので、色んなところで、唐津の話をしてあげたいと思います。唐津のためにもなるかと思いますが、世界中の料理人は、みんな食材に関する新しい知識について、喜んでくれますので。そして今回、このイベントを支えてくれた120人のスタッフですが、皆さんすごい熱心で、技術もあるし、こちらも勉強になるので、お互いにシェアしていったら、どんどんと盛り上がるのではないかと思います。
大越(ソムリエ):日本に住んでいても各地の良いものを知らず、DINING OUTを通じて初めて知ることがあります。今回も初めて知る農園の方々に出会いました。その土地土地の人が、良さを発信されるべきなのだけど、まだ甘かったり、気付いていない部分があるのでしょう。DINING OUTがどんどん力をつけていって様々なところで注目されることで、そこの土地で使われる食材に価値がつけばいいと思います。最後に出した日本酒が温故知新というものなんですが、「古きを訪ねて、新しきを知る」なんて、まさにDINING OUTのための日本酒だと思いました。新しい発見を日本国内で出来るのも幸せな企画だと思っています。
中村(ホスト):地方創生って、地元の人が地元の良さに気が付くことだと思うんです。名護屋城は城ではあるのだけど、秀吉はこの唐津を日明貿易やアジア全域に渡る貿易の拠点にして、国際都市にしようとしていたんです。貿易のメインは焼物で、地場産業としての発展も目指した。そういったとてつもない拠点を作ろうと思っていたことをポジティブに思った方が良いです。当時、言ってみれば、日本人がこんな馬鹿げたことをやろうとしていたことを知った方が良い。馬鹿げたことって、ものすごいエネルギーが必要で、今、世の中に馬鹿げたことが少ないのは、みんな責任を取りたくないから。DINING OUTだって、普通だったらアウトドアのグルメイベントなんて、責任取らなきゃいけないかも知れないから、やりたくないと思うでしょう。でも、それをやるのがDINING OUTなんだと思います。無茶してみましょうよ。そこから生まれるものがあるから。世界にもっと面白いものを生み出していきましょうよ。
丸若(クリエイティブプロデューサー):馬鹿って良いですよね。好きです。昨日、大雨の中決行したプロデューサーは大馬鹿野郎だと思いますよ(笑)。普通なら責任取らなきゃいけないから、やりたくないだろうけどやった。それによって、お客さんも他では味わえない経験が出来たと、逆に楽しんでいた。ダイニングをアウトする。この後、始まるDESIGNING OUTもそうだけど、色んなものを取っ払って、新しいことに挑戦しようとする考え方の方が美しいと思います。
■地方創生は地元の方々と共に
特別ゲストとして、唐津出身の篠笛奏者・佐藤和哉氏が演奏しました。土地と音色が共鳴し、DINING OUTを彩りました。そして、今回は、13名の窯元・作家、120人の地元佐賀県のスタッフと準備期間に約5ヶ月をかけて実施したそうです。
「DINING OUT ARITA& with LEXUS」にて特別に作られた器を販売していたので見に行きました。
※今後はECサイトでも販売予定とのこと。詳細はONESTORYメディアにて。
■LEXUSドライビングプログラムにて、唐津の町を観光
「DINING OUT ARITA& with LEXUS」をサポートするオフィシャルパートナーのLEXUSが、「LEXUSドライビングプログラム」を実施していたので、早速体験。唐津の海や虹の松原の絶景など、佐賀の魅力をLEXUSの走りと共に過ごしてきました。過去、マイカーは大きい車に乗ってきたので、せっかくだからと、スポーティな車種にしました。平坦な道を走る時は、車高が低いぐらいしか変化を感じなかったのですが、鏡山という山の登り降りの時に、スポーツモードにすると、カーブの入口・出口の加速がパワフルで、ドライブ感がぐっと増して、病み付きになりそうでした。走りに徹した車も良いなと思いました。
レクサスプロジェクト・ゼネラル・マネジャーの沖野氏にも地方創生について伺いました。
-「DINING OUT ARITA& with LEXUS」は、どの様に地方創生に寄与されますか?
沖野氏:日本には眠れる魅力がたくさんあるということが伝わると良いなと思います。本イベントを今後もサポートしていきたいと思います。地元の方々がこういったアメージングな体験をすることが、次の何かを起こすきっかけになると思っています。
■終わりに
「えっ。イソギンチャクって食べられるんだ…」びっくりしました。
地方創生をテーマにしたイベントを運営するONESTORYさん、制作に携わった方々、開催地・佐賀の方々、スポンサーのLEXUSさんの思い、深く感じることが出来ました。インターネットにより、色んな価値が標準化していると思います。スピードと大きな流通はとても便利ですが、物足りなく思うこともあります。今まで陽の当たらなかったものに、陽を当てることが出来るのもインターネットの良さだったりします。世界にはインターネットがなくても笑って暮らしている人もいるでしょう。要は一人一人が相対的ではなく、自分のアイデンティティに根差した幸せを感じることが出来れば、もっとゆったりと暮らせるのではないかと思った旅でした。それには、やはり自然や歴史というのが大きく関わることも実感しました。
日本全国アスファルトの色も標識の形も一緒です。だけど、車の窓から海越しに見るうねうねとした湾や小さな島が浮かぶ光景、そして、城の跡の何かを感じる重みが、そこにありました。食材も作られた皿も人もそこにありました。また新たなアイデンティティに会いに、日本全国あちこち行きたいな、そんな風に思いました。
今回のイベントレポートいかがでしたでしょうか。最後まで読んで頂いた方には、本当に感謝です。ありがとうございます。では、また次の回でお逢いしましょう。
文章:HAMAO