記念すべき15回目を迎えたGREENROOM FESTIVAL 2019。トム・ミッシュやコリーヌ・ベイリー・レイらを迎え、国内外の豪華アーティストが横浜・赤レンガを彩った2日間【ライブレポート】

2019/07/05

2019年5月25日、26日の週末、サーフ&ビーチカルチャーの祭典「GREENROOM FESTIVAL(グリーンルーム・フェスティバル)」が横浜で開催された。このフェスは、“Save The Beach, Save The Ocean”をコンセプトに、ビーチを愛する国内外のミュージシャンやアーティストが集結し、音楽やアートを通して、未来の子供達に大切なビーチを残していこうと2005年にスタートしたイベントで、今年は記念すべき15回目。チケットは事前に全てソールドアウトし、入場するのに長蛇の列ができるほど、年々盛り上がりが増しているのが伺える注目のフェスだ。

会場に設置された合計7つのステージで華やかに次々と繰り広げられる、豪華アーティストのライブがこのフェス一番の醍醐味。メインステージの「GOOD WAVE」と「BLUE SKY」は、向かい合うように設置されており、国内外の人気アーティスト達が交互に登場してパフォーマンスをする。今年の「GOOD WAVE」には、クレイジーケンバンド、Chara、KREVA、King Gnuなどの国内アーティストと、Leon Bridges(リオン・ブリッジズ)、ALOE BLACC(アロー・ブラック)、Tom Misch(トム・ミッシュ)など海外アーティストが名を連ねた。「BLUE SKY」には、昨年に続き人気のNullbarich、EGO-WRAPPIN’の他、Corinne Bailey Rae(コリーヌ・ベイリー・レイ)が登場して話題をさらった。

左:GOOD WAVE 右:BLUE SKY

緑の中にあるライブステージ「HUMMING BIRD」は、TRI4TH、SIRUP、ビッケブランカ、安藤裕子、竹原ピストルなどの国内アーティストを中心に構成され、赤レンガ倉庫をバックに繰り広げられるガレージライブステージ「RED BRICK」には、LUCKY TAPES、TENDRE、 KANDYTOWNなどの人気アーティストが花を添えた。また、船に豪華DJ陣のダンスフロアが登場する「PARADISE SHIP」では、高木完&K.U.D.Oや、沖野修也、BAKUがパフォーマンスを披露し、「GALLERY STAGE」という会場で唯一の屋内ステージには、CAN’T STEAL OUR VIBE、AmPm、yahyelなどが出演した。

左上から時計回りに:HUMMING BIRD / RED BRICK / GALLERY STAGE / PARADISE SHIP

他にも、芝生の上で行うヨガエリア、子供が遊べるキッズエリア、ビーチカルチャーにゆかりのあるアーティストの作品を展示したアートギャラリーなどが設置されるなど、音楽、アート、ビーチに関わるライフスタイルを丸ごと満喫できる空間を作り上げるのがグリーンルームフェスティバル。HIGHFLYERSは昨年に続き、今年は2日目、26日のレポートをお届けする。

「BLUE SKY」のトップバッターは、今年で活動23年目を迎えたEGO-WRAPPIN’。大歓声の中、ピンク&レッドのワンピースとハットにシャイニーブラウンのタイツというキュートな出で立ちで現れたヴォーカルの中納良恵は「海が気持ちいいですね。今日も張り切って行っちゃおう!」と行って「PARANOIA」から元気にスタート。一気に観客をEGO-WRAPPIN’ワールドに引き込み、「Neon Sign Stomp」、「10万年後の君へ」が続いた。MCの後は名曲「a love song」を歌い上げ、「サニーサイドメロディ」が続くと大観衆が一気に感動の頂点へ。その後は、5月にリリースしたアルバム「Dream Baby Dream」から新曲「CAPTURE」を披露し、アップビートなリズムで会場はさらに盛り上がりを見せ、「くちばしにチェリー」、「裸足の果実」と続けてプレイした。太陽の強い日差しが照りつける快晴の中、「ちゃんと水飲みや」と時折観客を心配しながら、曲間に挟む大阪弁の軽快なMCで会場を笑いに包み、ステージの端まで動き回った中納。ピアノ、ベース、ドラム、トロンボーン、トランペット、サックス、ギター、ヴォーカルという大所帯の圧倒的迫力と、ジャジーで愉快でメローなサウンドとリズムとダンス、そして唯一無二の歌唱力に魅了され、終わった後もしばし余韻に浸るほどの素晴らしいステージを魅せてくれた。

EGO-WRAPPIN’

午後の「BLUE SKY」には、OROGINAL LOVEが登場。今年2月に発売された4年ぶりのニューアルバム「bless You!」に収録された「グッディガール」からスタートし、「ゼロセット」、「AIジョーのブルース」、「bless you」を歌った。続いて「接吻」のイントロがかかると、超満員の観衆からは大歓声が起こり、大合唱が始まり、会場にはこの上ないほどの一体感が生まれた。その後は名曲「月の裏で会いましょう」、「Two Vibrations」が続き、「The Rover」でステージを締めくくった。最初から最後まで一貫してエネルギッシュで若々しいパフォーマンスを披露した田島貴男。観客は、セクシーでパワフル、そして独特な地声とファルセットとギタースキルに圧倒された。

OROGINAL LOVEが終わると、「GOOD WAVE」にCharaが登場。変わらないセンスと独特なファッションで、若さ溢れるステージを展開。「恋は目を閉じて」、「Junior Sweet」、「Cat 」、「Swallowtail Butterfly〜あいのうた〜」、「やさしい気持ち」などを歌った。また、ゲストとして途中に登場したTENDREとは「Twilight」を、緋美とは「大切をきずくもの」を披露して、観客を沸かせた。

続いて「BLUE SKY」のトリを飾ったのはCorinne Bailey Rae。インストが始まると、メンバーがコリーヌを紹介してステージに登場。「こんにちは〜グリーンルームフェスティバル!海の側で子供達も遊んでて、こんな素敵な遊び場はないわね。ここで歌えて嬉しいわ!」と言って、2016年に発表した「Been To The Moon」からスタートした。ステージでは、「Closer」、「Till It Happens To You」、「Paris Nights/ New York Mornings」、「Trouble Sleeping」、「Put Your Records On」、「Like A Star」、「The Skies Will Break」と、今までのアルバムに収録された曲を満遍なく披露した。2006年に世界的大ヒットを記録した「Put your record on」がかかると会場からは大歓声が湧き、中には泣き出すファンも。衝撃的なデビューを飾った当時の美貌とキュートな風貌は今も健在で、コリーヌらしい淡いブルーの爽やかなワンピースとパープル色のベルトがあまりにもお似合いで印象的だった。

Corinne Bailey Rae

そして、「GOOD WAVE」のラストを飾ったのは、昨年のSUMMER SONIC 以来の来日となったTom Misch(トム・ミッシュ)。数十発の花火まで打ち上がって最高に盛り上がったフィナーレだったが、同時刻に唯一の屋内会場である「GALLERY STAGE」では、yahyel(ヤイエル)が激しいライブパフォーマンスを繰り広げていた。yahyelは、池貝峻(ヴォーカル)、篠田ミル(サンプリング)、 大井一彌(ドラムス)、山田健人(VJ)のメンバーの4人で構成されたバンドで、彼らのスキルと世界水準を視野に作り上げる世界観は、日本国内よりも先にロンドン、パリ、ベルリンなどヨーロッパでじわじわと知名度を上げている印象を受ける。海外のフェスにも積極的に参加している新進気鋭の注目バンドだ。

会場には4Non  Blondesの「What’s Up?」が穏やかに流れる暗転の中、ステージに池貝以外のメンバーが登場。メロディが突然止むと、ステージ上のスクリーンが真っ赤に変わり、スモークが舞台袖から湧き上がる。ライトが赤と黒に激しく動き出すと池貝がゆっくりと登場し、静かな音楽とともにスクリーンの映像も変化し始め、一曲目の「Slow」へ。深く底知れぬ低音ヴォイスと美しいファルセットを織り交ぜながら、それに呼応するかのようにスクリーンの映像が刻々と変化していく。続けてほとんどMCを入れずに披露したのは、「Hypnosis」、「Karma」、「Flare」、「Body」、「 Pale」、「 Germany 」、「Tao 」、「Iron」の全9曲。池貝のダンスのような叫びのような激しい動きと心臓を貫通するようなリズム、山田のVJを始め、4人のクリエーションの支配力の強さに観客は虜になり、ステージ前方には、我を忘れて最後まで狂ったように踊る様々な人種の大勢の人々が。ここがグリーンルームフェスティバルの会場であることをすっかり忘れて、彼らの作り上げる独特な世界に惹きこまれていった。

yahyel

 

以下は、ライブ前に行ったyahyelのインタビュー。

写真左から大井、山田、池貝、篠田

―グリーンルームに初めて出演ということですが、印象はいかがですか?

山田:いい感じですね。

大井:なんか目が覚めた感じです。僕は神奈川出身なので、ここは中学、高校生の頃はよく遊んでいた思い出深い場所です。パンケーキを食べるために赤レンガに来て並んでました。

―パンケーキですか!皆さんは一見、グリーンルームの象徴でもあるビーチや自然とはかけ離れたイメージがしますけど、そんなことはないですか?

池貝:もともとブッキングしていただいた時からそれは感じていたんですけど、グリーンルームの空気にちょっと飽きてきた頃に箸休め的に僕らを観てくれると闇深い気持ちになっていいんじゃないかなと。

篠田:でも僕ら、海がすごい大好きなんで、海、風、波、グリーンルームフェスティバルって感じで。

―海はよく行きますか?

篠田:はい、すごい行きます。肌も焼いてて。

―肌、真っ白ですね(笑)。ところでyahyelさんは海外でも活動されていますが、海外の他のフェスと比べて、日本のフェスはどう違います?

池貝:ちょうど中国のフェスから帰ってきたところなんですけど、単純に日本のフェスは良くも悪くも治安が良いし、キレイなんですよね。 みんなすごく楽しんでいるし、マナーがいいと思うんですけど、逆に言うとフェスなのにお行儀が良すぎる気もします。

―海外はもっとやんちゃなイメージですか?

池貝:そうです。楽しみ方に自由があると言うか、各々が好きなように行動している感じのイメージはありますね。

―フェスに出られる時と、ワンマンの時と意識的に変えることはありますか?

池貝:僕らのワンマンに来るお客さんは、僕らの表現活動や舞台に興味を持って来てくれているだろけど、フェスに来るお客さんは、いろんなアーティストの音楽を楽しみに来ている人が多いと思うので、その点で違いがありますけど、ちゃんと呼んでいただいたからには、呼ばれただけのクオリティを出したいと思っています。そして、常にチャレンジャーでいたいので、ストイックにやろうと思っています。僕らは常に人の目の色を変えたいと思ってやっているので、フェスではよりそのハングリーさが増すと言うか、フラっと来た人を引き込みたいですね。

―活動をしてから4年目ですが、ご自身の気持ちや活動の内容に何か変化はありましたか?

池貝:バンドとして4年経ったからっていう変化は全然ないし、最初から目指しているところもやりたいこともあまり変わっていないですけど、人間としては時間と共に変化するなあ、と思います。単純にアーティストも人間で、特に僕らはとても正直で脚色のない表現活動をしているので、4年の中で優しくなった部分もあれば、こわばった部分もある。それが凄くシンプルに出ているんじゃないかと思います。

―初めの頃より活動しやすくなったり、バンドとして居心地が良くなったりはしました?

池貝:逆にそうなってしまったらダメだと思っていますし、常に次のステップを見据えていたいっていうのはあります。表現活動であって競争ではないので、自分たちの中で納得しちゃったら終わりだと思います。

―今回グリーンルームに出演されてるアーティストで交流がある方はいますか?

池貝:別に交流とかはないんですけど、僕らと同じ時間に違うステージでライブが行われるトム・ミシュとは同じレーベルですね。トム・ミシュのお姉ちゃんとたまたま同じ時期にスウェーデンに留学していたことがあって、何回か遊びました。それくらいですね。

―気になるアーティストは他にいますか?

池貝:別にリスペクトがないとかじゃないんですけど、あまり意識しないというか、単純にライブ前は自分たちのことだけに集中することにしています。どのフェスでも後から「ああ、こういうアーティスト出てるんだ」みたいに気付くことが多いですね。

―それでは、yahyelさんの音楽のスタイルを一言で表すと?

池貝:なんだろうなぁ。英語で言うとカタストロフィ(catastrophe)、崩壊とかっていう意味の言葉がしっくりくると思います。僕らの曲は、「誠実にいると壊れちゃうよね」っていう表現が結構多くて、一曲の中で冷静なところから壊れるところまで収まっていることが多いので。

―最後に、それぞれが今社会の中で気になっていることと、今後の夢を教えてください。

山田:気になってるのは国民年金と消費税と、安倍ちゃん(安倍政権)。夢は社会を豊かにすること。

篠田:安倍ちゃんと、丸山穂高は辞めないのか、どうするんだろうっていうのは気になってますね。夢は、みんなが楽しく生きれるといいですね。

大井:自分の個人的なことがあまりに忙しいので、社会の前に自分のことで精一杯ですね。夢はいつまでも音楽家でいたいです。

池貝:社会でと言われると難しいですが、先日、西安(シーアン)という、中国で一番監視が厳しいと言われている所に行ったんですけど、監視カメラがあらゆる所に設置されているんです。人種闘争的なものって日本にいるとあまり意識しないですが、現地では凄く感じるものがありました。

—それはyahyelさんの音楽活動にも深く関わっているテーマなのですか?

池貝:僕らはもともと日本人として、世界での人種的な影響力に対してアクションを起こしたいと思っているので、改めて、ミュージシャンとして自分たちの出生とか、東京に住んでることもちゃんと意識してやっていきたいなと思いました。もともと、日本に生まれて知らない内に影響を受けてる“当たり前のこと”みたいなものをちゃんと可視化して、考え直すみたいなことを続けたくて。そういう意味では、みんなで楽しくというよりも、みんな気づいて考えてるみたいな状況が僕の夢なのかもしれないです。

 

Interview & Text: Kaya Takatsuna / Photo: Atsuko Tanaka