KAWAIIの伝道師・増田セバスチャンが創る新しいモネの世界「Point-Rhythm World —モネの小宇宙—」【レポート】

2017/07/24

ポーラミュージアムアネックスでは、KAWAII文化を中心にエンターティメントやファッション、アートなど様々な分野で活躍するアーティスト、増田セバスチャンによる日本初のインスタレーション展示会「Point-Rhythm World —モネの小宇宙—」を2017年7月21日(金)から9月3日(日)まで開催している。 以前、HIGHFLYERS 2015年11月号でインタビューした西畠清順が「ウルトラ植物博覧会2016」を同会場にて開催してからちょうど一年、HIGHFLEYRSは増田セバスチャンの織りなす新たな世界「Point-Rhythm World —モネの小宇宙—」を鑑賞した。

タイトルの「Point-Rhythm(ポイントリズム)」とは、点描画法という意味の「Pointillism(ポインティリズム)」と「rhythm(リズム)」をかけた造語のこと。この展示会で披露されたのは、ポーラ美術館が所蔵する1899年制作のクロード・モネ『睡蓮の池』からインスパイアされたものを、増田セバスチャンが独自の点描にて会場全体に先構築したインスタレーションだ。約2トンもの色とりどりのマテリアルを用いて新しい解釈のモネの睡蓮の池がリズミカルに展開されており、遠くから絵画を鑑賞するかのように眺めるだけでなく、触れられるほどの距離まで近寄って、マテリアル一つひとつを吟味できるような空間設計になっている。

展示には、合計約2トンものカラフルなボタンや毛、キラキラと光るはななどのマテリアルが使われている

『クロード・モネの作品と対峙し、恍惚とするような美しい世界を感じながら不思議と裏側の世界に思いを馳せました。遠くから見る世界は近づくと全く違う世界かもしれない。現代に生きる僕にモネがそう語りかけているように感じます。その声が今回の作品の出発点です』と、コメントを述べた増田セバスチャン。自身が話すように、遠くからは自然の中の木々や草花と捉えていたものが、近くで見ると、まるで原宿を歩く若者たちが身につけている衣装やアクセサリー、ウィッグのようにも見えてくる。90年代よりKAWAII文化を牽引してきた増田セバスチャンにしか作り出せない独特の世界がそこには存在していた。

増田セバスチャン

また、この展示は作品にマテリアルを用いて立体的にモネの小宇宙を表現したことにとどまらず、VR(バーチャルリアリティ・仮想現実)と透明液晶を組み合わせている点もユニーク。 鑑賞者が作品の左右前方に進み作品に向かって手を動かすと、センサーがその動きに反応してVRの映像がカラフルに変化していく。作品にマッチした美しいグラフィックが、作品の奥にある透明の液晶に次々と映し出されると、まるで自分が作品を支配しているかのような、リアルとアンリアルの境界がわからなくなるような錯覚に陥る。

作品の前で手をかざすと、その動きにセンサーが反応して、後方の透明な液晶に青や紫などカラフルなVR映像が現れる

今回、KAWAII文化の聖地、原宿ではなく銀座で展示することをあえて選んだという増田セバスチャン。KAWAII文化に触れた最初の頃と、今でも「カワイイ」に対する価値観も意識も全く変わらないと話す彼にとって、いったい「カワイイ」とはなんなのかを聞いてみた。

『カワイイとは、決して表面的なことだけを指す言葉ではありません。「現場の世界に迎合していないぞ!」という若者なりの反抗であり、社会に対する声としての一つの表現であると考えます。そして、僕の言葉で言えば、”自分が心から好きなものだけを集めた小宇宙、誰も踏み込めない自分だけの世界”です。なので、その意思表示がファッションであっても、音楽でもアートでも、その出口は100万人いたら100万通りの表現があるのです』

秋からは文化庁文化交流使としてアメリカ、オランダ、アフリカ、中南米など世界へ旅立つことが決定しており、日本代表として独自の世界観を海外へ広げ、伝えていく増田セバスチャンの今後の動向にも目が離せない。

尚、会期中はポーラ銀座ビル1階のウィンドウにて、ギャラリー展示と合わせて増田セバスチャンによるディスプレイも行われている。

会期中、ポーラ銀座ビル1階のウィンドウで展示されている増田セバスチャンの作品

会期中、ぜひ会場に足を運んで、増田セバスチャンが表現する小宇宙を感じてほしい。

 

—増田セバスチャンプロフィールー

増田セバスチャン(ますだせばすちゃん)
アートディレクター/アーティスト

1970年生まれ。演劇・現代美術の世界で活動した後、1995年にショップ「6%DOKIDOKI」を原宿にオープン。きゃりーぱみゅぱみゅ「PONPONPON」MV美術、「KAWAII MONSTER CAFE」のプロデュースなど、原宿のKawaii文化をコンテクストに作品を制作。2014年よりニューヨークを中心に個展を開催。2020年に向けたアートプロジェクト「TIME AFTER TIME CAPSULE」を世界10都市で展開中。
http://m-sebas.com/

—展示会情報—

Sebastian Masuda Exhibition
“Point-Rhythm World -モネの小宇宙-”

開催期間:2017年7月21日(金)~ 9月3日(日)会期中無休
開催時間:11:00~20:00(入場は19:30まで) / 入場無料
開催場所:ポーラ ミュージアム アネックス 〒104-0061 東京都中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階
http://www.po-holdings.co.jp/m-annex/

 

Text: Kaya Takatsuna / Photo: Atsuko Tanaka