米原康正キュレーションによる、友沢こたお / PAC CAT / shiki♡の三人展「GOTH ESSENTIALS」がTRUNK(HOTEL)にて開催!

2021/04/21

アーティスト・編集者の米原康正がキュレーターを務める「GOTH ESSENTIALS – KOTAO TOMOZAWA / PAC CAT / SHIKI♡三人展」が、渋谷区・神宮前のTRUNK(HOTEL)にて4月22日より開催される。参加アーティストは、友沢こたお、PAC CAT、shiki♡の3名。

キュレーターの米原は、チェキを使って女性たちをセクシーに撮るスタイルがよく知られているが、90年代半ばから伝説のギャル雑誌「egg」や、原宿系女性をセクシーに捉えるフォト雑誌「smart girls」を立ち上げるなど、編集者としての才能を発揮してきた。そして、2000年代後半から中国に進出し、早くからその影響力を察知して現地で様々な活動を続け、今では中国版ツイッター、Weibo(ウェイボー)のフォロワー数が約280万人という人気ぶりだ。さらに、2017年から突如自分の作品にペイントした作品でアーティストとしてデビュー。毎年展覧会を開催しながら、同時にアーティストたちのキュレーション活動も開始した。

米原は自身の活動以外にも、若いアーティストたちの支援活動も精力的に行っている。その一貫として、今展示では「ゴス」をテーマに、気鋭の若手アーティスト3名を選出した。まず最初に、スライム状の物質と有機的なモチーフを組み合わせた独特な人物画を得意とする、友沢こたお。ヌメヌメという質感にこだわったその作品は、一度見ただけで忘れられないほどの強烈なインパクトを受ける。次に、自由な素材・技法選びとコンセプチュアルな表現が特徴のPAC CAT。00年代から独学で作品を制作していて、コロナ禍の外出自粛時での特殊なコミュニケーションと、それに伴うストレスからインスピレーションを得た暗喩に満ちた作品を発表している。そして、塗り絵やバービーを改造したイタズラな作品が主なshiki♡。現代社会を皮肉に描いた架空の広告ポスターシリーズが人気を集めている。

左から、友沢こたお、PAC CAT、SHIKI♡の作品

そこでHIGHFLYERSは、米原に、今展示を開催しようと思ったきっかけや、テーマのゴスについて、また、彼がよく知る中国のアートシーンの変化や日本との違い、そしてアーティスト3名には、制作において大事にしていることや、インスピレーションの源についてなどを聞いた。

個が集まり、グループになった時に作り出される時代感を感じながら、作品を通して「自分だったらどういう表現をするのか?」と考えて欲しい

―まず、米原さんにお聞きしたいです。この3人展を開催しようと思ったきっかけを教えてください。

米原:3人の作品から、ある種同じ匂いを感じたからです。3人展はTRUNK(HOTEL)と定期的に企画してるもので、今回で2回目になります。1回目は、JUN INAGAWA、 COIN PARKING DELIVERY、雪下まゆの3名で2020年の11月に開催しました。僕がこの3人展でみなさんにお見せしたいのは、ひとりひとりの作品だけではなく、個が集まりグループになった時に作り出される時代感。もちろん、それをパワーアップさせるために、最初に述べたように、その時のテーマに合わせて同じ匂いのするアーティストに声をかけています。

―今回は、なぜゴスをテーマにしたのですか?

米原:今の時代の閉塞感に対抗する、もっとも有効な手段だと思ったので。

―若いアーティスト達のキュレーション活動は、いつ頃からやっていたのですか?また、どのように発掘しているのですか?

米原:僕はもともと編集者で、1990年代に「アウフォト」という、投稿という形で素人の写真を集めた雑誌をプロデュース、編集をしていたのですが、そこには写真だけではなく、イラストなど様々なものが送られてきていました。今のSNSのようなことを、雑誌という媒体を使ってやっていたんですね。そして、そのスタイルが海外でも評判を呼び、いろんな国のアーティストたちから連絡が来るようになって。なので、その頃から世界中のアーティストたちの作品をチェックして、キュレーションしていたわけです。今はSNSを通してチェックしています。

米原康正

―3人のこともSNSを通して知ったんですか?

米原:そうです。PACに関しては、僕は覚えてないんだけど、10年近く前にmixiで僕に人生相談のメッセージしてきたらしいです。それに僕がきちんと答えたのが印象に残っていたみたい(笑)。

友沢:私は、ヨネさんが、TwitterのDMで声をかけてくださって、ヨネさんキュレーションのshiki♡ちゃんの展示に行ったんです。その時に初めて実際にヨネさんと話して、それ以降は月に何回も、ヨネさんと奥さんの葉子さんとご飯を食べたりお仕事したりするようになりました。

―いいですね。米原さんは、皆さんの作品のどんなところに魅力を感じたのですか?

米原:その人たち本人でなきゃ描けない世界観ですね。もちろん僕の趣味にぴったり、というのも。

―皆さんにとってヨネさんはどんな方ですか?

PAC CAT:スーパースターマンですかね。これ以上は胡散臭くなるので割愛させてください。

shiki♡:本来であるならば、ヨネさん世代のオトナというのは、若者からすると親や教師と同じ世代になるので、分かり合えなかったり、敵にもなる存在。でもヨネさんは、若者の視点や思考の持ち主であって多くを分かってくれると思います。だから若い層にも支持がある。今の日本には、こんなオトナがもっと必要だと思います。

友沢:落ち込んだ時にすごい励ましてくれたり、おとっつぁんができたような、私にとっての心の支えで、とてもありがたい存在です。ヨネさんみたいな人が大丈夫って言ってくれることで、すごく自信になるしリラックスできる。shiki♡ちゃんやPACちゃんに出会えたこともそうですし、いつもいろんな知らない景色を見せてくれるので、ヨネさんに会ってから人生がキラキラしています。

友沢こたお

―ところで、お三方の簡単なバックグラウンドを教えていただけますか?

友沢:ボルドーで生まれて、パリで5歳まで育ちました。それからはずっと東京です。絵は赤ちゃんの頃から描き続けてました。油画を始めたのは高1で、今は東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻4年在学中です。

PAC CAT:アート作品を制作する以前は、音楽系のアートワークデザインや、ミュージシャンをしていました。ちなみに初ライブはサマーソニックでした。

shiki♡:経歴は教えることは出来ませんが、一つ答えるならば、世の中に対する不条理や不満不平、疑問を表現したかったです。それが自分にとっては作品でした。

正体を不明としているshiki♡

―普段はどんなことからインスパイアを受けることが多いですか?

友沢:不条理です。叫びたいような時の方がキレキレなのを描けます。

shiki♡:私は、2000年代以前の古いカルチャーからインスパイアを受けることが多いです。ネットやテクノロジーも今ほど発達はしていなかったと思いますが、モノが良かったり、面白味があったと思います。例えば私が好きなキャラクターで、マクドナルドの「ドナルド」というピエロがいますが、彼が消えて13年以上も経ちます。理由は諸説ありますが、消費者の健康や権利を守る団体から抗議があっただとか、企業のマーケティング戦略の為に邪魔になったから消えたと言われているようです。そういうことを繰り返した結果、分かりやすさと、物を売るための広告効果は洗練された分、ドナルドみたいなキャラクターの面白さというのは自然と淘汰されてしまったのではないかと思うんです。他にも、カルチャーに関しては古いものに、クリエイティブレベルの高いものが多いように感じます。ネットの情報も限界があるので、自ら足を運んで古本屋に行ったり、その時代を生きた人から話を聞いて勉強して、ヒントを取り入れています。

PAC CAT:私はコロナ禍での感染リスクを避けた特殊なコミュニケーションと、それに伴うストレスを作品で表現しています。それが、そもそも作品を作り始めたきっかけでもあるので、普段の、あるいは過去の生活の中で何かしらインスパイアされているのだと思います。故意に何かからインスパイアを受けようとする行為は行いません。

PAC CAT

ーでは、作品を制作するうえで大事にしていることを教えてください。

友沢:自然体で、シンプルでいること。

shiki♡:色んなアーティストが増えてきた中、自分は周りのアーティストのやっていないことや、取扱っていないテーマなどに目を向けています。例えば、日本国内だと社会風刺を取り入れたアメリカンジョーク的な表現の土壌が出来ていないので、それらを取り入れることによって周りと作品を差別化することができますし、自分にしかできないリアリティを付けられると思います。

PAC CAT:説明不可能なパッションの塊のような作品も好きなのですが、自分で説明できないものを生み出すのは気持ち悪いと感じているので、極力無意味なものは作りたくないと思っています。その一方で、矛盾しているようですが、自分自身でも到底理解不能なようなものを生み出すことが理想でもあります。そういうパズルを解いていくのが好きなんです。解けたと思い制作し始め、実は解けていなかったことに気づいたり、別ルートで解いてみたり、発見があるので常に考えながら作ります。視覚的な最終工程を終えても紐が絡まっている場合は気持ちが悪いので、ブラックボックスに封印します。実際に鍵の付いた黒い金属製の箱です。

―ご自身のスタイルを一言で表すとしたら?

友沢:天然特殊ヌメヌメ。

PAC CAT:これというスタイルに極力留まり続けたくないスタイルですかね。常に探していたい。

shiki♡:身体に悪いジャンクフード。

―ところで、米原さんは中国にもたくさんのファンがいらっしゃいますが、いつ頃から中国に進出していたんですか?

米原:中国本土に初めて訪れたのは2008年。上海万博以前のことです。

―当初、中国のマーケットに可能性を感じたのは、どんなことを通してそう感じたのですか?

米原:上海万博以前何もなかった更地に、1年もしないうちに高層ビル群が立ち並ぶスピード感や、新しく作られた施設の中で、いろいろなイベントに参加した時のその現場を任されているスタッフたちの若さですね。どれをとっても日本にはない未来がそこにありました。

左:2009年に上海のギャラリーで個展を開催した 右:中国で約2500店舗を運営していたアパレルブランド『メタスバンウェイ(METERS/BONWE)』で、米原のTシャツライン“エムティー(MTEE)”がスタート。パーティーを開催した時の様子。2011年頃

―その頃と比べて、中国のアートシーンはどのように変化してきていると感じますか?

米原:中国人のアートに対する興味が、中国国内から世界へと大きく広がりました。今や中国で人気があること=世界の人気なのです。

―日本人と中国人の間で、アートに対する見方や考え方に違いを感じることはあります?

米原:今、日本で無名なアーティストを中国に連れて行き、向こうで人気者にさせることが一つの流れとしてあります。人気者しか扱わない日本のアート業界とは違い、様々な方法で、アーティストではなくアートを商業として成功させようという意識がそこに感じられます。

―面白いですね。最後に、今回の三人展を観にくる方たちには、どんなことを感じて欲しいですか?

米原:みんなの作品を見て、「自分だったらどういう表現をするのか?」を考えて欲しいです。

友沢: この3人で展示できるのが嬉しすぎて、決まった時からずっとハフハフしてて気合を入れまくり描きました。いつもと違うこたおが見れるかもしれないので、期待していてください。

PAC CAT:いいね、好き、かわいい、かっこいい、すごい。そういうのと、その逆のもの。そこからもう1歩先、2歩先、または後ろに何かある気配を感じてもらえたら幸いです。もし「この作品は嫌いだな」と思ったとして、何故嫌いだと感じたのかを深く掘り下げるのは、物好きくらいかもしれませんが、自分は「それを掘り下げることも角度次第では楽しいのでは?」と提案したいですね。

shiki♡:テーマはゴスとなっていて、3人それぞれに違うゴスの要素を表現していて面白いと思います。それを楽しんでいってもらえたら嬉しいです。一般的に、ゴスはダークな真っ黒いものというイメージが強いかと思いますが、それだけでなく、違った目線かつ、本質から外れないゴスを表現できればと思ってます。

Text & Photo: Atsuko Tanaka

 

GOTH ESSENTIALS – KOTAO TOMOZAWA / PAC CAT / shiki♡三人展

キュレーター:米原康正

アーティスト:友沢こたおPAC CATshiki♡

開催期間:2021年4月22日(木)~4月25日(日)

会場:TRUNK(HOTEL)内、TRUNK(LOUNGE) ROOM 101(東京都渋谷区神宮前5-31)

開廊時間:13:00~20:00

入場:無料