世界最先端の音楽シーンを体感した2018年サマーソニック。チャンス・ザ・ラッパーやジョルジャ・スミス、トム・ミッシュなど新世代の才能が集結!【イベントレポート】

2018/09/05

19年目を迎えた日本最大の都市型音楽フェスティバル「サマーソニック」。出演アーティストを日ごとに総入替して東京と大阪の2都市で同時開催され、豪華ラインナップが毎年注目される。今年は、ベックとノエル・ギャラガーをヘッドライナーに迎えたほか、アメリカのヒップホップの革命児、チャンス・ザ・ラッパーの初来日や、今年グラミー最優秀新人賞を受賞したアレッシア・カーラの出演が大きな話題となった。開催に先駆け行ったインタビューで、主催の清水社長が話していたように、今年は6つあるどのステージのどの時間に行っても充実している「総力戦」で、全てのステージでくまなく素晴らしいアーティストが楽しめる豪華さが魅力だった。HIGHFLYERSは東京2日目の8月19日、幕張メッセとZOZOマリンスタジアムに参戦。注目アーティストをピックアップしたレポートをお届けする。

ステージは、幕張メッセ側にレインボーステージ、ソニックステージ、マウンテンステージが作られ、スタジアム側には、マリンステージ、ビーチステージ、ビルボードジャパンステージがあり、その間は無料のシャトルバスで移動できるようになっている。19日のラインナップを見てみると、レインボーステージは、日本人アーティストを中心に、ちゃんみな、DAOKO、m-floなどが出演し、ソニックステージは、プティ・ビスケット、ポルトガル・ザ・マンやセント・ビンセント、ジョルジャ・スミスなどの海外注目アーティストが揃った。マウンテンステージには、フェスで圧倒的人気を誇るレキシやグラミー賞受賞者のアレッシア・カーラが、また、ビルボードステージには、UK注目アーティストのコスモ・パイクやジェス・グリンが登場。そして、ビーチステージには、ナルバリッチ、七尾旅人、トム・ミシュ、サンダーキャット、ジョージ・クリントン&パーラメント =ファンカデリックという多種多様な顔ぶれが揃い、マリンステージには、ラムズ、ザ・オーラル・シガレッツ、マイ・ファースト・ストーリー、マイク・シノダ、チャンス・ザ・ラッパー、ベックらが名を連ねた。

ソニックステージでは、2016年にエレクトロ・ミュージック界に新星のごとく現れたフランス人DJで音楽プロデューサーのプティ・ビスケットが初来日ライブを行った。ネット上での総ストリーミング回数が3.3億回を超えた代表曲「 Sunset Lover」のほか、デビューアルバム『Presence』収録曲を中心に13曲を披露し、会場を埋め尽くした観客は彼の新世代サウンドに酔いしれた。なお、プティ・ビスケットのライブレポートの詳細とインタビューは「INLYTE」のコーナーにて後日掲載するので、そちらも是非チェックしていただきたい。

プティ・ビスケット©SUMMER SONIC All Right Reserved.

同ステージには、イギリス出身のシンガーソングライター、ジョルジャ・スミスも出演。今年、最も活躍が期待される新人アーティストに贈られる”BRITs Critics’ Choice 2018″を獲得したジョルジャは真っ赤なスーツドレスで登場。デビューアルバムのメインソングでもある「Lost and Found」から始まり、アルバム収録曲を中心に披露した。「Where did I go?」、「Feb 3rd 」、「On your own 」、「Teenage Fantasy」、TLCのカバー曲「No Scrubs」、「Lifeboats」、映画『ブラックパンサー』のサントラに収録された「I am」、ドレイクも絶賛したデビュー曲「Blue Lights」、そして、ラストに「On my mind」をしっとりと妖艶に歌い上げた。

ジョルジャ・スミス©SUMMER SONIC All Right Reserved.

ビーチステージでは、トム・ミシュサンダーキャットジョージ・クリントン&パーラメント =ファンカデリックとライブが続いた。トム・ミシュの柔らく優しい心地の良いサウンドは、夕刻とも重なって、会場全体に清々しい夏の海風を吹き込んだ。ジョージ・クリントンはビーチステージでのトリにふさわしく、スタートから大いに盛り上がり、多くの観客が踊り唄い、全身でリズムを感じ楽しんでいた。

左:トム・ミシュ 右:ジョージ・クリントン&パーラメント =ファンカデリック©SUMMER SONIC All Right Reserved.

そして、待望の初来日を果たしたアメリカ音楽シーンの革命児、チャンス・ザ・ラッパーはヘッドライナーとしてベックが控える直前のマリンステージに登場。まず、共に来日したトランペット奏者のダニー・トランペットとコーラスのメンバーが舞台上に並び、「Mixtape」が始まると、チャンスが黒のTシャツとウーウェア(Wu Wear)のスウェットパンツにハイカットのスニーカーと、全身黒で統一したスタイルで舞台上に飛び出した。チャンスが目の前に現れた瞬間を待ち焦がれていた観衆は、一曲目から高いテンションで「Blessing 」、「Angels」を一緒に歌い、ラップする。チャンスは「こんにちは。俺の名は、チャンス・ザ・ラッパー。イリノイ州シカゴから初めて東京にやってきたよ!みんな曲をよく知ってくれていてよかった 」と話すと、セカンドミックステープの『Acid Jazz』より「 Favorite Song 」、「Cocoa Butter Kisses」、カニエ・ウェストのカバー曲「 Ultralight Beam」、7月に配信したばかりの新曲でライブ初披露となった「 65th & Ingleside」を歌った。「日本に来てちょっといつもと違う経験をしたから心配だったけど、東京のみんなは僕のこと知ってるみたいで安心したよ」と言って、新曲「Work Out 」を歌うと、「今日は僕が君たちに許可を出す。思いっきり狂って叫んでくれ!」と言い放った。会場が熱気に包まれ、会場前方では度々モッシュが生まれるなか「What’s the hook? 」を歌ったあと、一度舞台袖に去ったチャンスは「ウーウォウ!」と袖から観衆に何度も呼びかけてから再び舞台上に現れた。

チャンス・ザ・ラッパー©SUMMER SONIC All Right Reserved.

後半はDJ カリードプロデュースによる、ジャスティン・ビーバーをフィーチャーした「I’m the One」を観衆と大合唱し、その後はアルバム『Coloring Book』の曲から「All we got」を歌い、「ここにいる人でカラーリングブックのミックステープで僕を見つけてくれた人どのくらいいる?アシッドラップの人は?右の一番上も左の一番上もスタジアムにいるみんなに今日は特別な経験を味わって欲しい。みんなで一緒に飛び跳ねて騒ごうぜ!」と叫んで「No problem」へ。「All night 」、「Summer Friends」の後は、舞台上に座って、優しく「Same Drugs」を歌い、最後は「Blessings」をリプライズ。“Are you ready for your blessings? Are you ready for your miracle, are you ready?”の歌詞を観衆と何度も大合唱してライブは幕を閉じた。チャンスが去った後も感動と興奮の余韻が広がったままのライブ会場は、終演後もしばらくスタジアムを包む多幸感が収まらなかった。横にいたアフリカ系の男性が興奮のあまり号泣している姿が印象的だった。

その後スタジアムのトリを飾ったのは、17年ぶりに2度目のヘッドライナーのベック。彼の出番を待ち兼ねたファンたちがスタジアムを埋め尽くした。「Devis Haircut」「Loser」「The New Pollution」「Wow」「 Dream」 などの名曲を歌い、昨年配信リリースしたシングルでコラボレートした日本人アーティストのDAOKOがゲストで登場すると、一緒に「Up All Night」を披露した。アンコールの後は、無数の花火が海上に打ち上がり、少し涼しくなった真夏の夜空を華やかに彩った。

ベック©SUMMER SONIC All Right Reserved.

 

どのステージも魅力的なアーティストが並んでおり、あまりに観たいアーティストが多かったため、時間帯が重なりライブに間に合わなかったアーティストも数人いたのが唯一残念なところ。先日のインタビューでは、今後はラテン音楽に注目していくと語っていた清水社長。これからどのアーティストに注目し、日本の音楽シーンとサマソニファン達にどのような刺激を与え続けていくのか。来年20周年を迎えるサマーソニックの次の展開にも大いに期待したい。

Text: Kaya Takatsuna