REJUVENATE
#8 | Nov 28, 2024

来月にワンマンライブを控えた注目アーティストluvisが、上京当初から通いつめるミュージックバーで語る、自身の過去と今、そして未来のこと

Interview & Text: Kaya Takatsuna / Photo: Atsuko Tanaka

PROFILE

アーティストluvis

京都宇治出身の、東京を拠点に活動するSSW/Track Maker/guitarist。 作詞・作曲・編曲・トラックメイキングを全て自身で行う。 先代から受け継がれてきた言葉になる前の原始的感情を今を生きる人々へ、さらにはその先の時代に生きる人へと繋いでいく。ジャズ、ソウルミュージック、オルタナティブロック、フォーク、自然が生み出したものから影響を受けた有機的なサウンドと独特な表情を持つ歌声が特徴。 luvisはluv(love) is から来ており、生涯かけて「愛とは何か」を模索しながら表現活動を続けていくというテーマを掲げている。

 

HIGHFLYERSにゆかりのある人物に、ご自身の心のオアシスとして大切な場所を紹介していただくコーナー「Rejuvenate(リジュビネイト)」。第8回目のゲストは、シンガーソングライター/トラックメイカーのluvisさん。京都から東京に活動の拠点を移して活動しており、来月にはワンマンライブが控えている。そんなluvisさんの選んだ場所は、恵比寿と代官山の中間地点に位置するビルの4階にある「Spincoaster  Music Bar Ebisu」。店内の壁はセレクトしたレコードで彩られ、お酒が楽しめるカウンターバーの隣にはDJブースも。センスのいい音楽を存分に楽しめるミュージックバーである。

 

僕はインディペンデントとして、自分の意思で音楽を作っていく。どんな状況でも“Little Happiness”を見つけられる人でありたい

—この場所は、luvisさんにとってどういう場所ですか。

上京して初めてできた、自分の家以外で誰かと集まる場所です。自分のレーベルが持っているバーなんで、営業してない昼間の時間帯には、最近リリースした曲のミックスはここで行いましたし、通い詰めていた時期もあるので、すごく思い入れがあってゆかりがあります。

 

luvisさんの所属レーベルSpincoasterとの出会いを教えてください。

3年前ぐらいになるんですかね。まだデビューする前の全くの無名時代に、BIG UP!というサブスクのサービスに初めて自主製作のシングルを出したのですが、出したその日に林さん(Spincoaster代表)がどこかで見つけてくださって、「良いと思ったんで、記事にしていいですか?」って連絡が来たんです。当時僕はまだ京都の実家に住んでいて、楽器店で働いていました。

 

 

—京都で生まれ育ったそうですが、どのような音楽環境で育ったのですか?

おばあちゃんが小学校の音楽の先生をやっていて、校長先生も務めていました。おじいちゃんもよく歌っていたし、父はギター、母はピアノをしていて、家族みんな音楽にある程度の熱量を持って生きている環境でした。 僕は幼い頃からそんなに目立った感じじゃなくて、わりとナードなタイプだったけど、歌だけは結構人前で歌っていました。なので、音楽との距離は近かったんですが、僕のルーツとなっている音楽は、ブラックミュージックを“とある理由”で好きになって、自分で掘り出した感じです。

 

—とある理由とは?

もともとフォークの弾き語りをしていたんですけど 、初めてレコーディングして、自分の音源を聞いた時に、絶望的にリズム感がないなと思ったんです。それで、Googleで「リズム感がいい音楽」って調べたらブラックミュージックがヒットして。それからApple Musicでブラックミュージックヒストリーに興味を持って、黒人が炭鉱時代にやってたブルースから今のヒップホップまで網羅してるプレイリストを聴きまくっていたらハマりました。それでリズム感が良くなったかはわからないけれど、そのあと、いろんな人とセッションするうちに、リズム感もついてきたのかもしれないですね。

 

—今のluvisさんの音楽に影響を与えた人物を教えてください。

ダブルDなんですけど、まず1人目がディアンジェロ、それからダイナソーJr.っていうアメリカのロックバンド。まず、ディアンジェロは、グリッドとズレたところにグルーヴや遊びを生み出して、音の持つ自由さや楽しさを教えてくれた最初のヒーローです。ダイナソーJr.は、自分の中にある魂みたいなものの表現方法を教えてもらった。彼はファズって言って、めちゃくちゃひずむペダルをギターの前にかまして泣き喚くようなギターソロを弾くんです。それが生まれたての赤子みたいに丸裸の表現だなと感じて。それまでは京都という場所もあって、ちょっと殻にこもりながらやってたんですけど、そこで一気に弾けたのかもしれないです。

 

 

—東京に出てきて何か変化はありましたか?
京都にいた時は、ただの音楽好きみたいな感じだったけど、東京に来てからは、明確に音楽で食ってかないといかんみたい気持ちになりました。

 

—東京がそういうふうに思わせたのは何だったんですか?
一人暮らしをしたのは大きかったし、 環境にめちゃくちゃ影響を受けるタイプなんで、周りの人たちの“乾き”や“飢え”に触発されたのもあります。それから、燃えたぎる心みたいなのを持ちつつも、音楽で生きていくっていうのはやりたいことをただやっていればいいわけでもないなと思うようになりました。

 

ーそういう意味で一番影響を受けてる人はいますか?

Rintaro Miyawakiっていうカメラマン。最近でも結構インディーのシーンを撮っていて、僕のアートワークとかアーティスト写真とかはほとんど彼が撮ってます。上京して一発目の写真に僕を選んでくれて。

 

luvisさんの音楽と合致するところがあるんですか?
人間の悲しみの部分も映すみたいなところ。最近出した「Blue Inside You」というEPは、人間の影の部分に焦点を当てつつ、爆発力というか同世代でしか出せない熱量みたいなのも感じながら仲間達と一緒に作り上げました。同じ時期に彼が鹿児島から上京したタイミングも縁だし、京都にいた時に出会っていたらお互い惹かれてないと思います。

 

 

—音楽に影響を与えている、音楽以外のものはありますか?

京都時代はいろんなものにアンテナを張っていた時期がありました。そもそも最初は器にハマったんですよ。それで大分県の小鹿田焼の窯元まで行きました。村全体が分業で、職人さんが、それぞれただ無心に作っている姿を見て究極だなと思ったり、あとは、禅がすごく好きでいろんな本を読んだりしました。例えば、禅の「不二(ふに)」という考え方に出会った時には、自分の中の概念が物事を決めつけていることを知り、ステレオタイプを疑ったりするようになりました。別にどこかの宗派に所属しているわけではないので、禅に限らず自分に良いものを柔軟にいろいろ取り入れています。

 

luvisさんの曲を聴くと、ヒップホップ、フォーク、ポップス、アンビエント、、、といろんな要素があってとても面白いと感じるのですが、ジャンルというか、カテゴリーみたいな境界は持っていないのですか?

僕はもともと「90年代のソウル」とか、ジャンルで区切って掘ることが多かったです。でも結果的に溶けていく。自分の中で熟成されていくタイミングって、その境界が溶けていってる時なのかなって思います。

 

—その溶ける瞬間みたいなのは自分で実感するんですか?

どうだろう。でもじわじわと溶けていくのかもしれない。僕最初はミスチルとか聴いてたんですけど、そこからディアンジェロに出会って、ブラックミュージック的な要素が自分の中に生まれるまで結構時間かかったんです。それまでは何かリズムはかっこいいけどスーパーで流れてそうな曲になっちゃったりとか。

 

—今後、目指していく方向性はありますか?

あくまで人間が意思を持って作っている音楽をやっていきたい。たくさんの人が関わって作っていくメジャーな音楽も一つの体系として全然いいと思うけど、僕はあくまでインディペンデントとして、自分が主導権を持って作っていきたいのは常にある。その上でより多くの人に広げていきたいかもしれないです。

 

 

—音源を作る時と、ライブで意識的に何か変えてることはありますか。

やっぱり音源っていうのは、例えば昆虫でいうと標本みたいなもの。残念ながら生きたものではないし、いくらでも加工できちゃう。あくまで過去の音であり記録であり、それをキャッチして残していくこと。 その時は確かに震えていたけれども今ではないってことですね。一方、ライブは自分の心も生きて動いてる中で、お客さんの心もライブしている。その 瞬間に出す空気の震えをお客さんと完全に共有できるもの。

 

—では、luvisさんにとってチャンスとは何ですか。

チャンスっていうのはどこにでも存在しているものだと思うんですけど、いろんな段階があると思ってて。例えば、チャンスが目の前に現れた時に、そもそもチャンスだとも思えなくて素通りしちゃう人もいると思うし、道ですれ違っただけの人もいる。でも、元々自分が常にチャンスを求めてたら、これはチャンスだよってすれ違う時にわかる気がするというか、そのチャンスに対してどうアプローチできるかで多分いろいろ変わってくるんだろうなって最近すごく感じてます。周りに自分でチャンスを掴み取った人がちらほらいて、そういう人の話を聞いてると、やっぱもうこれでもかってぐらいの血眼でチャンスを掴みにいくみたいなことをしているんですよ。

 

—振り返って、ご自身が掴んだと思えるチャンスはありますか?
今、近い将来、そういうチャンスに出会う瞬間があるだろうなっていうのを、ひしひしと感じています。 来年あたりに来る面白い流れみたいなのを。

 

—いいですね。では、luvisさんにとって成功とは何ですか。

成功っていうのは、心の豊かさをちゃんと自分で認識し続けることなのかな。僕がすごく大事にしてる考えが「Little Happiness」。例えば毎日同じ道を歩いて通勤していたら、毎日同じ景色の中で、たとえば駅前の一軒家の壁の隅に植木鉢があって、春になると花が咲くのをいいなと思える余裕があったり、そういう変化に対して喜びを見いだしたり、そういうLittle Happinessをちゃんと自分で作っていきたいと思います。やっぱり自分自身に余裕があると、人に対しても与えることができると思うし、心の豊かさを持って他者に接したら、多分その他者を通して自分がめちゃくちゃ幸せを感じられるだろうと思って。今まで自分は結構与えてもらってきたので、今度は自分がそういう人間になりたいなって思っています。

 

—素敵ですね。では、まだ実現していないことで、叶えたいことは?

まずはフジロックのホワイトステージに立つこと。あとは、クレイロと握手して、自分の愛を伝えたいし(笑)、ダイナソーJr.と一緒にアメリカのギター屋さんに行ってエフェクターひきたいです。

 

—いつか彼らと共演するのも楽しみにしていますね。ところで来週は川越コーヒーフェスティバルに出演していただきますが、コーヒーはお好きですか?
ネルドリップが好きで、一時期めちゃくちゃコーヒーにハマって、そこから結構日常的に淹れています。深煎りばっかりですね。 ギターのエフェクターとか、日本酒とかコーヒーとか、いろんなことを教えてくれたミュージシャンの先輩がいて、京都でその先輩と飲みながら感想を言い合うみたいなことをしていたんです。「コーヒーの中に甘みがある」とか言われて、最初絶対に嘘だと思ったんですけど、本当に感じるようになってきたら、それからどっぷりハマっちゃって。だから、コーヒーのイベントにお誘いいただけて嬉しかったし、 楽しみの一つです。

 

—コーヒーの甘みなんて、プロみたいです。

元々ジャズがめちゃくちゃ好きだったんで、やっぱりジャズ喫茶に行くとコーヒーが出るじゃないすか。僕の中では、ジャズとコーヒーってめっちゃ似てて、音とコーヒーを一緒に飲むみたいな感覚。コーヒー飲んでる状態って音が入りやすい状態だと思っていて、その感覚がすごく好きでジャズ喫茶にハマりました。でも、僕カフェイン弱くて、1杯飲むと、他の人が10杯分カフェイン摂取したくらいの震えがきちゃうから、その感覚がジャズに合っていたのかもしれないけど(笑)。

 

 

luvis Information

luvis – One man live –

公演概要

日程 : 2024年12月13日(金) 開場時間 : 18:00

開演時間 : 19:00

会場 : WALL&WALL

〒107-0062 東京都港区南青山3丁目18−19

アクセス : 東京メトロ「表参道」駅 A4出口から徒歩約5分

出演アーティスト : luvis (band set)

チケット : 前売り: ¥3,500

当日: ¥4,000

18歳以下は500円引き(顔写真付き身分証明書提示で当日500円キャッシュバック)

チケット販売: ZAIKOにて10月8日19時より販売開始

注意事項 :

  • 館内は禁煙。
  • ドリンクは別途料金が必要です。

詳細はこちらより